異能の代償 ページ23
桃色の文字列が女性の脇腹の打撲を打ち消した。顔色が元に戻り,意識を取り戻す女性。
「ママァ〜！！」
「彩花！ゴメンね心配かけて」
駆け寄ってきた我が子を抱きとめる女性。Aはそっとその場を離れると待っている怪我人の手当を開始する。
敦がAに尊敬の眼差しを向ける。
「凄いですね。而も…与謝野先生と同じ治癒系の異能力なんて」
然し国木田は顔を顰めながら,心配そうな目つきでAを見てたかと思うとツカツカと歩きだしてAの肩にポンッと手を置いた。
「Aさん…動くのもやっとですよね」
「あー…バレちゃった？」
そう云って振り返ったA。
優しげな笑みを浮かべているが先程の母親と同じ真っ青な顔色になっていた。
「同等…若しくはそれ以上の痛みが跳ね返ってくる異能…。あまり使うと与謝野先生に注意されていたな」
真剣な顔つきの国木田は難しい顔をしながらそう呟いてAを離れた場所で休ませる。
「敦！この場は任せた」
「えっ…あ,はい!!」
状況を理解した敦は怪我人の手当を変わってくれた。
「痛たっ…」
脇腹を抑えて蹲るA。
Aの異能
“君死給勿”は姉と同じ異能名で治癒系の異能だが,一つだけ違う点がある。其れは治療中は患者と同等の痛みを味わうことになる。場合によっては倍以上の傷みが跳ね返る。
「直ぐに痛み…引くと思ってたんですが…」
「無茶するな…与謝野先生がどれ程心配するか…貴女も分かるだろう？」
そうこうしている内に,軍警を呼びに行っていた谷崎がAの元に戻ってきた。
「呼んできました…ッて！Aさん
もしかして異能を使ったンですか!?」
少し回復したとはいえ,顔色の悪いAを見て心配する谷崎。
「あはは…少し、」と苦笑するA。
すると,谷崎の後ろから見覚えのある葡萄色の隊服を身に纏った軍警が現われる。
「！…Aさん,心拍と呼吸が乱れてます
それに発汗も異常です」
寄りにもよって…猟犬が事故現場に来てしまった。
「……大丈夫ですよ。唯の代償ですから」
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作者名：御影 | 作成日時：2022年12月2日 13時
