与謝野先生の妹,無明の王と政略結婚しました【条野採菊】 (ページ22)

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君死給勿ページ22

専門学校終わりに武装探偵社で手伝いをしているA。

「Aさんの事務処理能力凄いですわ〜」

「ありがとうございます」

目にも止まらぬ速さで電卓を打ち込んでいくAに社員一同が釘付けになる。
「助かります」と国木田がAにお礼を云いながら書類整理をしていた。

すると飛びこむように事務所のドアを開けて入ってきたのは外回りに出ていた敦だった。

「大変です!!付近で事故があって怪我人が!!」

「何だと!?然し…与謝野先生は別件で今は居らん…」

するとAがスクリと立ち上がり敦に視線を向ける。胸に手を当てて真剣な表情になると

「妾(わたくし)が参りましょう。
中島さん,御案内を」

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救急セットをたずさえて敦,国木田,Aの３人で事故現場に向かった。

電柱は傾き,車はフロント部分が拉げている。巻き込まれたであろう複数の怪我人が歩道で呻いていた。

「ｯ…これは!!」

目を見開き絶句するA。然し,直ぐに平然を取り戻すと救急セットの中から道具を取り出して治療を開始する。

流石は専門学校生の首席。
極めて滑らか尚且つ迅速に負傷者たちの手当をしながら指示を出すA。

「谷崎さんは市警に連絡を！
中島さんは軽症者の手当をお願いします。
国木田さんは野次馬の相手を!!」

「はい！」

「分かりました」

「任せろ」

するとAの服の袖を掴んで泣きじゃくる子供が現れた。その女の子は頻りに「ママが〜…」と云ってある方向を指さした。

Aは女児を谷崎に任せると壁に凭れて真っ青になっている女性に近付いた。

腹部を強く打ったのだろう。脇腹辺りを押さえて痛みを耐えていた。Aは其処に優しく手を添えると戦場に舞い降りた天使の如く霊妙に微笑んだ。

国木田が焦った様子でAの居る場所に目を向けた。

「！真逆,Aさん…異能を」

「異能力───“君死給勿”」

その瞬間。Aを中心に柔かい光を帯びた桃色の文字列が溢れ周囲を包み込んだ。