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「ごめん」
「私が悪いの。ぼーっとしてたから…ごめんなさい」
彼に会えてほっとしたからだろうか
自分の情けなさが身に染みたからだろうか
視界がじんわりとぼやけていく。
泣いたら、きっと光成くんは余計に自分を責めるのに
会えてよかった、なんて呟きながら
溢れてくるそれが止められない。
「ん…、ごめんね、泣かせて」
一度身体を離すと親指で涙を拭って
彼は落ち着かせるように
頭をポンポン、としてくれた。
大きな背中に腕を回すと
乱れていた呼吸が段々元通りになっていく。
「まじで焦った。なんかあったらって」
「ごめんなさい…」
「もう、あんま離れちゃだめだよ？」
「うん。走ってまで探してくれてありがとう」
「当たり前じゃん、絶対見つけるよ」
「絶対…」
「うん、…Aちゃんは大事な人だから」
ドーン、と大きな音が彼の後ろで鳴る。
びっくりして光成くんが振り返るから
私もそっちに目線を送ると、花火が上がっていた。
大げさに反応したのが恥ずかしくて
お互いに顔を見合わせれば、
プッと思わず吹き出してしまう。
よかった、ドキドキしてたのばれてなさそう。
「…もっといい場所、知ってたのに」
「さっき、案内してくれようとしてたところ？」
「うん。間に合わなかったかぁ」
自信があったのか、彼はかなりショックそう。
花火に照らされるその表情は
少しだけ不満げだった。
「来年、リベンジさせて」
「え…」
「次は絶対一番綺麗な花火見ようよ」
当たり前のように出てきた来年と言う言葉に
緩みそうになった口元を抑えるために
わざと唇を噛む。
見上げた先の花火は、少し木や建物に隠れて
ところどころしか見えなかった。
けど、光成くんと初めて一緒に見たこの景色は
きっとこれからどんなに綺麗な花火を見たって
忘れることはないんだろうと思う。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年2月23日 21時
