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「光成くん、どこ行くの？」
「普通のデート、したいなって」
「え？」
「他の高校生たちがしてるデート、しようよ」
「普通の…デート」
「周りの子とかもそうだけど、結構親や周りに
大事にされてるでしょ？
こういう自由な行動とか、
あんまりしないのかなって」
電車に揺られながら、そんな会話。
テレビやたまに見る雑誌の世界に
確かにずっと憧れはあった。
小さい頃は習い事。今も送り迎えは必須。
ありがたいけど、そこに自由はなくて。
彼の言葉に頷くと、じゃあ一緒にしてみようって。
「不安かもだけど、今日は俺がいるから」
「う、うん」
「とりあえず、電車ではこうしてていい？」
「っ…うん」
掴まれていた手首がいったん解放されて
今度はその手が私の手を包む。
人が多い休みの日の電車は確かにはぐれそうで怖い。
返事をすると、彼はぎゅっと私の手を握ってくれた。
ある駅で降りるとそのまま私の手を引いて
彼はかわいらしいカフェへと入る。
「可愛い…っ！こんなのあるんだ…」
「あ、初めて？俺、今これ練習してるんだよね」
「え、これを？すごい！」
「ふふ、ありがとう。
最近で上手くできたのはね…これ」
カフェラテを頼んだら出てきたのは
ふわふわの泡の猫。
可愛くていろいろな角度から見ていると
彼は私に携帯に入っている写真を見せてくれた。
そこには、同じようにマグカップに乗った
ふわふわの泡でできたクマ。
凄い！と感動してつい見入ってしまう。
「うちに来たら作ってあげるね」
「いいの？」
「いいよ。
ただ、練習中だから下手だったらごめん(笑)」
「できるっていうのが凄いよ！楽しみ！」
つい気分が良くなって若干前のめりに。
ふっと彼の口角が上がるのが見えて
もしかして引かれた？と焦る。
「よかった」
「っへ、？」
「俺とまた、会ってくれる気はありそうだから」
「あ…」
「初対面だし、だめだったら
この話無しになるかもでしょ？」
光成くんに言われて、ハッとした。
あんなに緊張してたのに、今では楽しい。
また会えるんだ、と思うと自然と頬も緩んだ。
でも逆に、光成くんは？
そう思っていると、目線でばれたのか
彼は少し笑いながら
“俺もまた会えたら嬉しいなって思ってたところ”
と言ってくれた。
「っ…」
その瞬間、
きゅっと心が摘ままれるような感覚になった。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年2月23日 21時
