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「…へ??伊野尾先輩!?」
嬉しそうに、さっきとは違い高めの声を出すさくら。
俺への対応とはえらい違いだな。
「伊野尾先輩いるなら言ってよ!!」
ひそひそ声の怒鳴り声という器用な声で、俺に抗議する。
いや…言いたくても、
言えるような格好や状況じゃさっきまでなかったもんで…。
伊野尾くんはにっこりとこちらに微笑んだ後、一旦、顔が引っ込んでから、
シャツのボタンをしっかりと締めた状態でカバンを持って降りてきた。
「こんにちは。」
貴公子のような笑顔で、俺の幼なじみに会釈する。
その美しい微笑みに動けずにいる俺の幼なじみ。
「伊野尾先輩、こんにちは!!」
「さくらちゃんだっけ?お使い?偉いね。」
完璧なまでの、後輩キラースマイル。
さっきまでの弱々しい潤んだ瞳は微塵も感じなかった。
「高木、俺、用事思い出したから帰るな。」
「えっ!?もう!?」
今からがいいところだったのに…。
完璧にさくらに邪魔された。ちっ!!
苦々しい顔でさくらの方を見れば、
伊野尾君をうっとりとした顔で見つめていた。
「さくらちゃんも、もう帰んの?」
「あ、はい!!長居は無用なんで!!」
なんだこいつ…いつもはダラダラいるくせに…。
「んじゃ、途中まで一緒に帰ろうか。」
「いいんですか!?」
「ってか、こいつ、隣の家だよ。」
「ゆうちゃん、うるさい!!伊野尾先輩と帰れるなんて嬉しいです!!」
ニコニコしながら、伊野尾君とさくらは会話を進める。
苦々しく二人を見つめる俺のことなんて、ほったらかしだ。
「高木、また明日、学校でね。」
「ゆうちゃん、バイバーイ。」
ーバタン。
あっという間に締められたドア。
さっきまで、伊野尾君との甘い時間が流れていたはずなのに。
なんなんだ…まるで嵐だな。
あぁ…。伊野尾君との甘いひととき、お預けかぁ…。
この時は、特に気にもとめていなかった。
急に俺のことを求めたのも、
急にその気がなくなったのも。
いつもの伊野尾君のいつもの気まぐれ。
ただ、それだけのこと。
いつもの日常のはずだった。
何も気づかずに、ただ、伊野尾君に触れられなかったことだけを悔やむ馬鹿な俺は
歪ながらも均等を保っていた俺たちの関係がこっから崩れていくなんて、
思ってもいなかったんだ。
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