【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ10)

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8:放課後。テニスコートにて。① ページ10

帰りの会が終わり、急いでテニスコートへ向かう。
まあ、実際急いでるのは心ちゃんで、私は急いでないつもり…なんだけど心ちゃんに手を引かれながら走る。

『ねえ…急ぐ必要あるの…？』

内心呆れながら心ちゃんに聞く。インドア派な私はもうすぐ体力切れする。

｢あるよ！異様なまでにある！早く行かないと、人が多すぎて見れなくなる！｣

心ちゃんは、余裕そうに走る。

少しするとテニスコートが見えてきた…けど！
お前ら部活はどうした。って言いたくなるほどの女子…ってあれ？デジャブ…
そんなことを考えて思い出す。

『心ちゃん！部活は？！』

思わず大きな声が出る。
それに心ちゃんが驚いて、まぁまぁ…と私を宥(なだ)める。

｢体育館部活は、月1で体育館掃除をするんだけどね？それが今日なの。｣

『それで？』

私は、じっと心ちゃんの目を見つめる。

｢それで、今回は掃除の範囲が少ないから部長、副部長以外は下校になったの。｣

そう言われて腑に落ちる。
ならいいけど…とつぶやくと、心ちゃんにサッと手を取られ、急ご！と言われ、コートへ向かう。
コートの周りのフェンスには、ぎゅうぎゅう詰めなぐらいに女子が集まっていた。
遠くから見よう？と言うと、心ちゃんは少しふてくされながら了承する。
テーマパークの列のような大勢の女子達の最後方に行く。位置的にはフェンスの端。心ちゃんは、全然見えないよぉ…と嘆いている。
少しすると、コートに近いほうから黄色い声が上がる。心ちゃんと顔を見合わせてから、2人でフェンスにしがみついて何があったのか見ようとする。
すると、微かに誰かが来るのが見える。

｢ん？あれって…｣

心ちゃんは見えたみたいだけど、私は全く見えず、半分諦めたつもりでフェンスから離れて、目を伏せる。目が疲れた。軽く伸びをしようとすると、

｢Aさん！｣

と、優しい声で呼びかけられる。
跳ねるように、目を開けて声のした方を見ると、
ユニフォーム姿の幸村先輩が、フェンスの端からひょっこりと、顔を出している。
なんか…かわいい。

｢来てくれたんだね。｣

『幸村先輩に呼ばれましたから。』

そう言って微笑むと、幸村先輩は嬉しそうに笑う。
なんとなく心ちゃんを見ると驚いた顔をしている。少し面白い。

『先輩、ユニフォーム似合ってますね。』

｢そうかい？ありがとう。｣

他愛のない会話をしていると先輩は部員の人に呼ばれ、戻っていく。
心ちゃんは始終目を見開いていた。