【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ46)

今日:12 hit、昨日:2 hit、合計:6,650 hit

41:いわゆる吊り橋効果ってやつ？ページ46

マネージャーとしての本領発揮をしてから、毎日忙しい。やることが多くて、練習を見てる暇も、ほとんどない。

まぁ、“王者”って呼ばれるほど強いし、しょうがないんだけどね。

次に何をするかを常に考えてなきゃ、歯車が狂う。
少しの休息を経て、時計を見る。

次は……ドリンク持って来なきゃ。あーあ。忙しい。

心の中で文句を言いつつも、この日常を楽しんでいる自分がいる。
私はスキップ混じりの駆け足で、部室に向かった。
＿＿＿
＿＿
＿

『んー…どうしたものか……』

現在。私は、目の前に置かれた状況に頭を悩ませている。
そもそも、立海テニス部(ここ)の部員は、人数が多いんだから、一人で来たのが間違いだった。
いつもはブンちゃんと来ているのだけど、普通に忘れていた。

まったく……自分のポンコツさに腹が立つ……

どこかでサボっているであろう仁王先輩を見つけ出して、手伝わせるにも探す時間が無い。

手間がかかるけど……分けて持っていくか。

ため息をついてから、ドリンクの入ったカゴを持つ。

『うっわ……重っ……』

普段から重いドリンクと憂鬱が重なって、いつもより重く感じた。

＿＿＿
＿＿
＿

『……重い……腕痛い……』

文句がダダ漏れになりながら、足を引きずるように歩く。

ふぅ…と息を吐いて、カゴを抱えるように、持ち直す。

また取りに戻るんだし、さっさと置いてこよっと。
少しだけ駆け足にして歩く。

テニスコートに入ると、もはや聞きなれた、強くボールを打つ音が一層大きく聞こえる。

コートを見ると、片面に2人づつ入ってラリーをしていた。

前を向き直して、歩く。
すると、突然誰かの大きな声がした。

＿＿危ないっ！

驚いて声のした方を見て、足が竦(すく)んだ。

勢いのあるテニスボールが、真っ直ぐ、私に向かって飛んでくる。曲がる様子はない。
風の少ない今日と、ボールが苦手な自分を恨んで、固く目を瞑った。

痛みを覚悟して、身体に力が入った。

だけど、いつまで経っても痛みは来ない。
それどころか、ポンッとボールの軽い音がした。
恐る恐る目を開けると、そよ風に揺られたジャージが、視界に映った。

『あ……れ、？』

少し見上げた光景に目を疑う。

｢ちゃんと避けないと危ないだろ？Aさん。｣

『幸……村、先輩……』

振り返って微笑む幸村先輩。
速くなる鼓動を押さえつけて、お礼を言う。
あれは、素なのか……それとも……

頭を振って、余計な事は考えないようにした。