【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ42)

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38:理由なんて分かんないよ。ページ42

｢なぁ、A。｣

隣にいたブンちゃんに話しかけられ、簡単に返事をする。

｢なんか……Aって、幸村君のことよく目で追ってるよな｣

『……へ？』

何食わぬ顔で言うブンちゃん。
な、…な……！

『何言ってるの……！いきなり！』

自分でも顔が赤くなってるのが、嫌なほどわかる。

｢へぇ…その反応だと、もしかしてお前……幸村君のこと好……！｣

『わーっ！ばか！そんなんじゃないしっ！』

後悔するほど、あからさまな反応で誤魔化すと、ブンちゃんがニヤニヤした顔で見てくる。
そして、やっぱ好きだろい。と茶化される。

『正直……この気持ちが、好き……なのか、どうか分からない』

そうブンちゃんに伝えると、なるほどなぁ。と言いながら風船ガムを膨らませた。
軽い音を立てて、割れたと同時に、口を開く。

｢んー……よくわかんねぇけどさ……｣

どこか遠くを見ながら、ブンちゃんが話し出す。
薄紫の大きい瞳と、赤い色の髪が少し揺れた。

｢その人と、一緒にいると楽しいとか……そう思えたら好きなんじゃねーの？｣

そこまで言うと、直ぐに照れくさそうに、よくわかんねぇけどな。と頬をかいた。

『……それって、私、ブンちゃんと一緒にいると楽しいし、好きってことになるんじゃないの？』

そう言うと、ブンちゃんは頬を赤くして、ちげーよ。と言った。
なんか可愛い……
口には出さないけど。

……思えば、幸村先輩と話すのは楽しくて…幸せで。胸のあたりに、淡く、優しくて、暖かい気持ちが溢れて……
一緒にいる昼休みが、永遠に続けばいいのに。なんて、いつも思う。
その気持ちを、ブンちゃんに伝えた。
たぶん、それは好きだろい。と、言われて、そうなのかなぁ。と話す。

｢なぁ、なんで好きなんだぜぃ？｣

人懐っこい子犬の様な目で聞かれる。
まだ好きとは確定してないんだけど……

『なんでだろ……理由なんて分かんないよ』

考えれば考える程分からなくなる。
だって、好きだって確信してないし……
それに、好きだとしても、いつからかも分からないのに。

｢んー…3年の女子は、優しいからとか、かっこいいから。とか言ってるヤツ多いけどなぁ｣

たぶん、そんな単純な理由じゃないはず……

『なんというか……幸村先輩って、いつもは優しく微笑んでるイメージだけど、たまに見せる物憂げな表情とかが、フランスの印象派みたいな、儚さがある……みたいな？』

つたない言葉で伝えていると、真田先輩に、私語を慎め！と怒られた。