35:苦手なヤツ。 ページ39
6時間目の国語。
静かな教室に、小説を音読する先生の声が響く。
周りを見渡すと、男子の大半は、机に伏せて寝てる。
そりゃそうだ。こんなん、眠くなるだろ……
眠気の限界が来て、大きなあくびが出る。
いいや……寝よ。
教科書で、顔を隠すようにして机に伏せる。
半分夢の中に入ったとき。
｢いっ……！｣
頬を抓られ、反射的に左隣の“アイツ”を見る。
｢何すんだよ……！紫音……！｣
小声で言いながら睨み付ける。
だけど、気にしてないように紫音は少し笑う。
｢別に？起こしてあげようと思っただけ｣
その少し笑う顔が、幸村部長に似てるのが異様にムカつく……
だけど、ここで声上げて叱られるぐらいだったら、流した方がマシだな……
そう思って、皮肉をたっぷり込めて返す。
｢あっそ。どーもありがとー。おかげさまで目が覚めたぜ｣
これで何も言い返せないだろ。と、心の中で、ドヤってると、
｢どういたしまして｣
なんて、もっと皮肉を込めて返される。
コイツ……！
睨みながら、紫音の方を見ると、頬杖をつきながら、なんとも思ってなさそうな顔で、教科書を見てる。
あーあ！なんでコイツは、見た目だけ幸村部長に似て、性格は似なかったんだろ！
｢俺、お前キライだわ｣
ぶっきらぼうにそう言うのもいつもの事。
それでも、コイツはいつもの様に、｢私もキライ｣と答える。
この言葉に、昔は何も思わなかった。
お互いにお互いが嫌いだけど、遊び仲間で。
でも、最近この言葉に違和感を感じた。
コイツが、嫌いなのは俺？それとも、コイツ自身？
たぶん聞いても意味はない。“あの時”みたいに。
どこか、クールで落ち着いてる今のコイツを、小学生のときみてぇに、泣かせたらどうなんだろ。
まず、最初に幸村部長に怒られるよな……いや、意外と無い？
それでも泣かせるのはなんかなぁ…
意外な顔が見たい。
あ、そうだ。
｢キライ……だけどよ、昨日はノート、サンキュ｣
あえて、目は合わせなかった。合わせたら言えない気がして。
何も答えない紫音に、無視かよ……と声をかけようとして、横を見る。
紫音は、黙って窓の外を見ていた。
ガチで無視してんじゃん……
でも、あえてなんも言わないでおく。
なんとなく、紫音の顔が赤い気がしたから。
ストーリーアイテム
苺のシャルロット
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作者名：ミケねこ | 作成日時：2019年1月1日 8時
