23:青いバラの奇跡 ページ25
日課でもある委員会の仕事をしようと屋上のドアを開く。冷たい風と共に、Aさんがいることに気づく。先に屋上にいたAさんと、じょうろを持って、後から来た俺。先週のことを思い出す。
｢あれ、Aさん。どうしたの？｣
後ろ手でドアを閉めながら聞いてみる。
どことなく、今日は雰囲気が違うように見えた。
『き、今日は先輩に、渡したいものがあって……』
新手の告白かなにかの様な言葉で、少し動揺する。
けど、すぐに分かった。
今日は金曜日。
『これ……なんですけど……』
微かに震えたその手にあったものは
｢入部…届け…？｣
予想通りだ。思わず、本気かい？なんて聞いてしまった。すると、緊張が吹っ飛んだように
『本気に決まってるじゃないですか！私、あの言葉が本気か、ずっと悩んでたんですから！今更冗談とか言わないでくださいよ？！』
と、早口で話し出す。
怒らせたかな？
そう思い、目を見つめると、彼女の目尻に涙が浮かび始める。
泣きそうになるほど考えてくれたんだ。
申し訳なさと、嬉しさが混ざる。
じょうろを置いて、彼女の元へ歩み寄る。
｢泣かないで。冗談なわけないだろう？｣
そっと入部届けを受け取り、ポケットの中のハンカチと入れ替える。手に持ったハンカチで、彼女の涙を拭い、優しく頭を撫でた。
＿＿＿
＿＿
＿
『先輩……女の子みたいなハンカチ使ってますね』
｢え？｣
そう言われて、ハンカチの裏面を見る。
妹の字で“紫音”と書かれていた。
｢あぁ。妹のハンカチを持って来てたみたいだ｣
『先輩って、意外と天然ですね……』
｢フフ、そうかな？｣
元は俺のなんだけどね。とは言えずに、教室へ戻る。青いバラの刺繍が入ったハンカチを畳んで、カバンに仕舞った。
【青いバラの花言葉:夢かなう。奇跡。神の祝福。不可能。】
ストーリーアイテム
苺のシャルロット
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作者名：ミケねこ | 作成日時：2019年1月1日 8時
