【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ23)

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21:小さく、大きな決断① ページ23

｢どしたの……A……｣

心ちゃんの引き気味な声が聞こえる。
それはそうだ。だって、朝から私は、頭を抱えて机に突っ伏してるんだから。

『部活……やばい』

手に持っていた｢入部届け｣と書かれた紙を見せる。
心ちゃんは真っ白の“それ”を見て、ご愁傷さま。と言った。

『あ～！もうどうしよう！』

あんなにマネージャーについて考えてたのに、結局決めきれてなかった。
だって、本気かわかんないし……

｢ちょっとそれ貸して｣

と言ったと思えば、心ちゃんに入部届けを取られる。
気づけば、心ちゃんは私の入部届けに
｢入部希望部活:男子テニス部(マネージャー)｣
と、書いていた。

『ちょっ…！』

取り返そうとすると、心ちゃんは勢いよく立ち上がり

｢私、先生に出してくる！｣

と、大きな声で言うと駆け出した。

『マジで、何やってるの？！』

そう言った頃には、心ちゃんは教室を出ていた。
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数分後。帰ってきた心ちゃんの手には、担任の先生のハンコが押された入部届けだった。
申し訳なさそうな顔で、ごめん…と言いながら私に手渡す。

｢つい、何も考えずに行動しちゃった……帰ってくる途中で頭冷えた……｣

『ううん。大丈夫。私がうだうだしてたのが悪いし…』

実際、心ちゃんは友達のために行動できる子だ。
この前も、クラスメイトの女子がなかなか好きな男子に告白できなくて、勇気を出させるために自ら行動していた。そして2人は両思いだと発覚。おかげさまで、2人は仲のいいカップルに。
そんなこと私には到底出来ない。むしろ、行動力のある心ちゃんが、正直羨ましいくらい。
それに、感謝してる。成り行きとはいえ、決断できた。

『ありがとう。心ちゃんのおかげで決断できた！私、マネージャーやる！』

そういうと、心ちゃんはほっと胸を撫で下ろした。
そして、頑張って！と、とびきりの笑顔で応援してくれた。

『それで…顧問の先生に出さなきゃなんでしょ？男子テニス部の顧問って誰？』

幸い朝の時間はまだある。今から出しに行ける。
そう思って心ちゃんに聞くと、笑顔のまま硬直した。

『心ちゃん？』

｢えと、その……｣

バツが悪そうに、目を逸らして話し始める心ちゃん。

｢男子テニス部って……なんて言うか……ちゃんとした顧問がいない……っていうか……｣

｢簡単に言えば……監督とかって……幸村先輩がやってる、から……入部届けの受付とかも、幸村先輩が、してる…｣

『…は？』

もうそれしか言えなかった。