【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ21)

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19:昼休み、少し久しぶりの屋上庭園にて。ページ21

木曜日。
部活を決める期限まであと、1日！
色々考えといて、まだ迷ってる。
教室で悩んでいるのもなんだし…と、校内を散歩しようと思っていたら、足は自然と屋上庭園へと進んでいた。
ゆっくりと屋上のドアを開けると、柔らくて、生温い風が頬を撫でる。
秋というには程遠い温度の風だ。
チラリと屋上庭園の方を見れば、やっぱり幸村先輩がいた。
私には気づいていない。
後ろ手で、静かにドアを閉める。
……だけど、風に押されてドアが、｢バタン！｣と大きな音を出して閉じた。
サッと、こちらを見る幸村先輩。

『えと……どう、も……？』

少しつっかえながらも声を出す。

｢何か用かい？｣

優しい笑顔に心の中で、胸を撫で下ろす。
散歩に来ただけです！と答えると、幸村先輩は、そうかい。と言って花壇の方へ再び向いてしまった。
もう少し話したかったなんて少しガッカリしながら、花壇の隣のベンチへ座った。
幸村先輩は、何やら真剣そうな顔で花壇と向き合っていた。
その横顔をじっと見つめていると、

｢うん。こんなものかな。｣

突然、幸村先輩は優しく微笑んだ。
そして、私の方を向いて

｢Aさん。ちょっと来てくれないかい？｣

と手招きする。
引き寄せられるように、私は幸村先輩の元へ歩く。
そして、隣にしゃがみこんで、どうしたんですか？
と聞いた。

｢この花。覚えてるだろう？｣

幸村先輩がそっと触れた花は、この前スケッチした花だった。

『もちろんです！忘れませんよ。』

と、言うと幸村先輩は嬉しそうに笑う。
そして、昼休みにここに来てみれば、この花だけ倒れていた。と教えてくれた。
だからあんなに真剣そうな顔で……

｢この花は、“桔梗(ききょう)”って言うんだけど……聞いた事あるだろう？｣

その言葉に、ゆっくり頷く。

｢桔梗の花は、俺も結構好きだから、倒れてて驚いちゃって……幸い踏まれたわけではないような倒れ方だったから、すぐ直せたんだけどね……｣

幸村先輩は、どこか照れくさそうに微笑みながら話す。
そして、凝り性が出ちゃったかな……。と、呟いた。

『この前出会ったばかりですけど、私、桔梗の花好きです。花言葉はなんて言うんですか？』

桔梗を見つめながら言う。
風に揺られたその花びらは、私たちの言葉にくすぐったそうにしているように見えた。

｢桔梗の花言葉は、“気品”“永遠の愛”。白の桔梗は、“清楚”があるかな。｣

桔梗の花に似合う言葉ですね。と、言うと私はそっと桔梗の花に触れた。