【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ3)

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2:屋上庭園にて① ページ3

屋上庭園。場所は分かんないけど、とりあえず屋上登っとこ。みたいな軽い気持ちで最上階の扉を開けたら、広々した無機質な世界が広がる。
屋上に行けるの変な気分。今まで来たことないし。
なんて思いながら、少し歩いてみる。
ふと、視界の左端を見ると少し大きな花壇が目に付いた。鮮やかな花達が凛々しく咲いていた。
いつもそう。この学校の植物達は、凛々しく、華やかでとても綺麗だといつも思う。
花壇の前にしゃがむと少し小さな紫の花が目に入った。そっと、左手で撫でると朝露が手に着く。
手を離すと、くすぐったそうに花が揺れて、可愛く見えた。スケッチブックを開こうとパラパラめくっていると、真っ白だったのは最後のページだけだった。

『んー…帰りに買わないと…画材屋さんあるのかな…』

ぼやきながら、シャーペンを取り出し、描き進める。不思議な事に、ペンが進む。ある程度書き進めたところで、上から知らない声が降りかかる。

｢フフ、素敵な絵だね｣

『うおぁっ？！』

突然の声に肩が跳ねる。
異様に男らしい声が出てしまった…
思わず口を抑えながら振り向くと、
高身長の男子生徒が、立っていた。
上履きの色的に、3年生…かな？

｢ごめん。驚かせちゃったかな。｣

私のあからさまな、反応を見て困ったように笑う。

『あ…いえ…私が集中してて、気づかなかっただけですから。』

内心めっちゃビビったぁ…なんて思う。
目の前の男子生徒は、そうか、なら良いんだけど…と、微笑む。藍色の髪が優しく揺れて、どこか、儚く感じた。
よくよく見ると、手にじょうろを持ってる。
これは、もしかして…もしかしなくても…！

『あ、美化委員の方ですか？ごめんなさい…私邪魔でしたね。』

口に出す言葉は冷静だけど、内心めちゃくちゃ焦ってる。
凄い業務的な敬語になったし…！

｢君もまだ、絵を描いてるだろう？だから、平気だよ。｣

や、優しい………じゃなくて！
何、私お言葉に甘えて、｢先輩｣の｢委員の仕事｣を邪魔しようとしてるんだ…！
危うく優しさに漬け込んだ外道になる所だった…
色々考えながら私は立ち上がる。

『先輩の仕事の邪魔は出来ないし…えっと…』

なんか座れる場所……と思って辺りを見回す。

『あ。あのベンチに座って描きますから。』

と、花壇の隣にあるベンチを指さす。
少し目当ての花から遠いけど、記憶力を使って何とか描こう！

｢そうかい？それなら、お言葉に甘えて。｣

フフッと、優しく微笑む先輩。
私も微笑み返した。