【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ20)

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18:9月に咲いたハイビスカスページ20

厳しい残暑の続く9月。暑かったり、寒かったりする、この月はあまり好きじゃない。
だけど、悪いことだけじゃないのは十分、分かっている。
家で育てているダリアも綺麗に咲いてくれるし、
好物の魚も美味しく食べられるし。
何だか子供っぽいけれど。
体育の授業中だと言うのにそんなことを考えながら、目の前で繰り広げられている、自分も出ていたはずのサッカーの試合を見ていた。
きっと、治りきってない病気が原因なんだろうけど、少し体調が悪くなってしまった。

｢みんな……苦労をかける｣

もはや口癖になりかけているこの言葉を呟いた。
1つ深呼吸をする。ふと、近くにあった花壇に、視線を移す。
風に揺れるハイビスカスが目に入った。
少し気になった。開花時期ではあるけど、最盛期はもう過ぎている。
そっと見つめていると

｢幸村！｣

と、同じクラスの男子に話しかけられた。
試合の合間に来たのだと思う。
体調について聞かれて、大丈夫だと返す。
ただ、もう少し休ませてくれ。と伝えた。
今はどうにも、動く気にはなれない。
まっすぐ校舎を見つめてみる。
1年生の教室がある2階の窓のあたりを見ていると、
知っている横顔が目に入った。
視力には自信がある方だから、確信できた。

｢Aさんだ……｣

思わず言葉がこぼれる。
最近、気づけば彼女のことを考えている。
どうしてなのかは分からないけれど。
柳に聞けば分かるだろうか。そんなことを考えていると、少しだけ彼女と目が合った気がした。
格好悪い姿は見せられない。
そんな言葉が頭の片隅に浮いて、気づけば身体が動いていた。
相手の持っていたボール目掛けて走り、颯爽とボールを取ると、ゴールに近い味方にパスをした。
ボールを受け取った味方は、そのままゴールにシュートした。
安堵に包まれた瞬間、疲れが身体にのしかかる。
考えずに行動するなんて、慣れないことするものじゃないな。
さっきのハイビスカスに視線を移す。
揺れる花びらは、俺の頑張りを祝福するようにみえた。

【ハイビスカスの花言葉:繊細な美。新しい恋】

作者の言葉
幸村視点の話を作ってみました…！
前回の【6時間目。数学にて。】と同じ時間帯です。分かりにくかったりした場合は、教えてください。

【番外編&短編集作りました。↓】
【テニスの王子様】はなことばのぱれっと【番外編&短編集】
ゆるい感じな話ばかりです。