【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ14)

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12:昼休み。美術室にて。ページ14

昼休み。私は心ちゃんにいい情報を聞いて、鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。
その情報とは｢毎週火曜日の昼休みは美術室が開いているらしい｣ということ！
美術室は授業で一回来たことがあるけど、結構広い！そんな美術室を自由に使えるとなると、ワクワクが止まらない。
美術室に着くと、ドアが開いていた。少し驚いて、そっと中を覗いてみる。予想通り人がいた。
ただ、どこか見知った後ろ姿。そっと美術室の中に入り、近づいて見る。

『幸村先輩！』

驚かせるつもりだったのに、私の声に振り向いた幸村先輩は全く驚いてない。それどころか

｢やあ。Aさん｣

と、爽やかに返事をした。脅かしようがないなぁ…なんて思いながら、幸村先輩が向き合っているキャンバスを覗く。そこには美しい風景が広がっていた。一つ一つの線や色の塗りが丁寧で、綺麗な絵で
思わず、わぁ…！と声が出た。

｢どうかな、急いで描いてたから少し雑になったと思うんだけど…｣

顎に手を当てて、キャンバスを見つめている幸村先輩の横顔は、どことなく儚げだった。

『雑だなんて…すごい綺麗な絵ですよ。』

ありのままに感想を伝えると幸村先輩は嬉しそうに微笑んで、ありがとう。と言った。

『幸村先輩はよくここに来るんですか？』

幸村先輩の描いた絵を眺めながら聞いてみる。

｢ああ。毎週火曜日は鍵を借りて、ここに来るよ。｣

それはつまり…幸村先輩が美術室に来ていることが、噂みたいになったってこと？
そう考えながら、そうなんですね。と返事をする。
後で心ちゃんに知ってたか聞いてみよう…

｢Aさんはどうして絵を描くんだい？｣

突然の質問に少し反応が遅れる。

『え？えっと…キャンバスとか画用紙に、思い描いたものと色彩が自分らしく表現できるのが好きだから…ですかね。』

いざ言おうとなると、出てこないですね…と付け加えて、しっかり考えてみる。
絵を描くのは好きだけど、どうして描くか…
簡単なようで難しい問題に頭を悩ませる。

『フフッ、ごめんね。変なこと聞いて。』

すごい難しい顔してたよ。と可笑しそうに笑う幸村先輩。
そんなにだったかな…と思い、少し顔が熱くなる。

｢もうそろそろ時間だし、教室に帰ろうか。｣

そう言って立ち上がる先輩。
ふと一瞬だけ見えた顔は笑いを堪えているようにも見えた。
そんな変な顔してたかな…私。
廊下を歩く幸村先輩の背中を見つめながらそう思う。

あれ、私絵を描きに美術室に行った気がするんだけど…