【テニスの王子様】花言葉とパレット【幸村精市】 (ページ12)

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10:放課後。テニスコートにて。③ ページ12

いくつかの試合を見て驚きっぱなしの私。
立海テニス部は、全国大会を２連覇していたとは前の学校でも聞いてたけど…想像の斜め上を行った…
時計を見て、時間的に最後の試合になるかな…と思った時。
女子達の黄色い声がいきなり強く上がり、驚いてコートの方を見る。
コートには、肩に羽織ったジャージをはためかせている幸村先輩がいた。

｢ひえ～…まさか幸村先輩の試合を見れる日が来るとは…｣

心ちゃんが大きな目を見開いて言う。
少し楽しみな様などこか怖いような…
不思議な感覚になりつつ、フェンスに手を掛ける。
すると心ちゃんが、コートを見つめながら幸村先輩のことを話してくれる。
病気で去年の冬から今年の全国大会直前まで入院してたこと。
常勝の掟を守るために勝ちにこだわっていること。
五感を奪うテニスをする事から“神の子”と呼ばれていること。
さすがに五感を奪うって聞いた時は驚いた。
びっくりしすぎて変な声出たし…
試合展開は今までとは違い普通…なのかな。
だけど、だんだん先輩のコートの方までボールが来なくなる。気づけば試合が終わっていた。
何があったのかよく分からない私と何かを察している心ちゃん。

｢ここからだと見えないけど…相手の人五感奪われちゃったんだろうな…誰かわかんないけど。｣

なんか納得出来るような出来ないような…
ふと見つけた幸村先輩は、息一つも乱していないように見えた。

部活終了のチャイムが鳴りそろそろ帰ろっか。と、心ちゃんと話していると

｢あ～…間に合わなかったかぁ…｣

と、毛先が外にはねた短めの髪の背の高い女子生徒が走ってくる。

｢あ。茜先輩だ。｣

心ちゃんが嬉しそうな顔で反応する。そして茜先輩が女子バレー部のキャプテンだと言うことを教えてくれた。
あと、茜先輩と柳先輩は幼なじみだと言うことも。
私の手を引きながら心ちゃんは茜先輩に駆け寄り、話しかける。2人は世間話を始めて、心ちゃんは茜先輩に私を紹介した。夏の太陽のような明るい笑顔でよろしくね。と言われて私もよろしくお願いします。と軽く礼をする。
すると｢茜。｣と、低く落ち着いた声がした。
声のした方へ振り向こうとすると私の手を握る心ちゃんの手の力が強くなり、横を見ると心ちゃんは硬直している。それを見て、糸目で長身の彼が、柳先輩であることを確信した。

おまけ。

『どうして幸村先輩のジャージ落ちないんだろ…』

｢A。それは触れちゃだめ。｣

心ちゃんはそう言って私の肩に手を置いた。