海坊主 二十の幕 ページ21
〘女ぁ！〙という海座頭の声にAは肩をビクつかせた。
ゆっくりと海座頭へ視線を向けると、その大きな目玉はAではなく、加世の方を向いていた。
〘お前が一番恐ろしい事は何だぁ！？〙
「も、もう私？今はあなたが一番怖いわよ…でも何だろう？私が一番怖いことって…」
焦りながらも、何故か真剣に考え始める加世を見て、こんな状況なのに、何故か笑ってしまう。
加世の明るく天然な…そんなところが坂井の家に居る時から好きだった。
〘聞こえぬわぁ〙
「せ、急かさないでよ！…えーっと、わっ私はまだ素敵な恋とかもしてないし…これからきっと楽しいことだって一杯あるはず！幸せな結婚をしてぇ♡可愛い子供とかできたりして！！」
身振り手振りしながら、加世は妄想を膨らませているようだ。
そんな姿を可愛いなぁと思いながら見ていたが、隣にいた幻殃斉は、呆れた表情で加世を見ている。
加世のすぐ後ろにいた薬売りは、いつも通りの真顔だ。
『(薬売りさん、こんな可愛い加世さんを見てどんな事思ってるんだろう…)』
頭に過ったのは、そんな事で…あまりにも場違いな考えに早々に頭の隅へと追いやった。
『(あぁ…なんて場違いな…そんな事思ってる暇なんてないでしょ…考えない考えない考えない…！！)』
「…でも、そんなこれからのことを何も経験しないで死んじゃうってことが…一番…怖いのかな？」
そう言った加世の言葉の後、ギァンと音が鳴った。
固まる加世の姿にAは心底心配になる。
数秒後、加世はお腹を抱えて苦しみ出した。
「うっ…！？くっ…あ…あっあああああ…ハァッハァッ……！？」
息を荒くしている加世は、下を向く。
すると、何があったのかは分からないが、加世はふらっとそのまま後ろに倒れてしまった。
丁度後ろに居た薬売りが、加世を抱きとめる。
「いっ………いやあああもう…私もう結婚なんてしない！！子供なんて絶対産みたくないー！！！」
「落ち着いて」
薬売りは、暴れる加世の右手を掴み、目を隠してやる。
加世に声を掛けるその声は、いつもAが聞いている、あの優しい声だった。
「海座頭が見せるのは只の幻、悪い夢を見たに過ぎない…加世さんの"真"は、何も変わらない」
「………薬売りさん」
あまりにも近すぎるその距離に、薬売りの優しい声に、加世の薬売りを見るその目に、Aの胸がちくりと痛んだ。
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箱庭の貴族(プロフ) - 続編がつくるの遅くなっても待ってます！ (2021年5月27日 23時) (
レス) id: 1cbebdeaf4 (このIDを非表示/違反報告)
ここあもち - すごく面白いです！モノノ怪の小説の中でも一番好きです！更新頑張ってください！！ (2020年12月12日 17時) (レス) id: 3533a1a32e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - 凄く面白くてシリーズ一気読みしました！更新頑張って下さい！ (2020年6月23日 1時) (レス) id: 4a83a3e4ca (このIDを非表示/違反報告)
senesu - 物凄く良いところで終わっていて叫びました...楽しませて頂いています。更新心からお待ちしています！ (2020年6月3日 2時) (レス) id: 5779693174 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 全シリーズ読ませていただきましたがとても面白かったです！夢主を交えてのお話でもちゃんとストーリー通りになっていてすごく楽しめました！続き待ってます！ (2020年3月1日 0時) (レス) id: 4f98ea6205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アリエス | 作成日時：2016年7月18日 10時
