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ヒトツメリッパー殺人事件15 ページ15
声も出なかった。涙は出るのに。
「君と二人きりになりたかったからね、邪魔なやつは消さないと」
哀音が警戒して、僕の前に出る。それを幸葵くんは嘲笑した。
「はははっ、守ってみせるって? 守ってみせろよ!」
ナイフを振り下ろす幸葵くん。僕が後ろにいるから避けられない哀音。
僕は声にならない悲鳴を上げた。鈍色が哀音の腹部に突き刺さる。それはすぐに抜かれて、どぼどぼと嘘みたいな量の赤い液体が流れ落ちていく。
それでは足りないとばかりに、幸葵くんは何度も何度も哀音の腹を突き刺し、引き裂いた。飛び跳ねる返り血に笑みを浮かべる姿は狂気にしか見えない。
僕はただ呆然と思った。
何故彼はこんなことを?
倒れた哀音の姿に泣き伏す僕の肩を、幸葵くんがいやに優しくぽんぽんと叩いた。ゆるゆると顔を上げれば、血塗れの顔で柔らかく笑う彼。
「これでやっと二人きりだね」
正気の沙汰ではない……そう悟ったところで、もうどうにもならなかった。
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作者名:瑠色 | 作成日時:2018年9月19日 23時