人それぞれ【d!】 (ページ17)

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目と目が合った、その時に。【sha】ページ17

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校庭を見渡せる小さなベンチ。放課後になると、きまってそこに座って忙しなく活動する運動部員達の姿を眺めた。何も考えずに、ただ放課後の空気を味わいながら過ぎてゆく時間を感じる。そういうのが好きだった。

今日も、いつも通りベンチに座る。見慣れた木目を一度撫でて、校庭に目を移す。……いつも通りじゃないのは、ここからだった。

奥の方で走っていた陸上部の女の子のフォームが綺麗だったから、その子を凝視していたら後ろから突然｢危ない！｣と声が聞こえた。反射的に振り向くと、眼前に迫るのは薄汚れた野球ボールだろうか。あと数秒で自分の顔に当たるだろうな、とのんきに考える。あいにく私はこのボールをキャッチしたり、避けたり出来るような運動神経は持ち合わせていない。来るべき衝撃に備えてぐっと目を瞑った。

……が、いつまで経っても想像していたような鈍い痛みはやってこない。一体どういう訳だ、と瞑っていた目を恐る恐る開いてみる。

｢大丈夫？当たってへんよな？｣

目を開くと、私の視界いっぱいに、一人の男の子が映っていた。野球部なのだろうか、野球帽を被り、ユニフォームに身を包んでいる。小麦色に気持ちよく日焼けしていて、ちらちらと覗く首元では汗が輝いている。いかにもスポーツ少年といった出で立ちだ。そんな彼とぴったり目が合った。どうやら彼が私を助けてくれたらしい。

｢えぇと……。うん、当たってない｣
｢良かった！ごめんなぁ、ボール飛ばしてしもて｣

心配そうにこちらを覗き込んできていたので、大丈夫だと伝えるとぱっと向日葵が咲くように笑った。真っ白な歯を覗かせて、彼の小麦色の肌とのコントラストが美しいと思った。

｢それじゃあ、気をつけてな！｣

向日葵みたいな彼は、最後に何故か私の頭をするりと撫でて校庭にかけ戻った。体の芯がじん、と熱くなるような感覚がした。

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