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息を吐く暇はない。
短銃を抱えた敵の左胸に刃を沈ませる。
背後の男に裏拳を食らわせ、血飛沫と共に大脇差を引き抜く。
頸動脈を大きく斬り、一度、無形で刹那、辺りを見回した。
手の中で、呑みきれぬ血を、刃は滴らせている。
その一瞬をついて、細い投げナイフが飛んでくる。
咄嗟にAは最小限の動きで避けたが、切っ先が頬を切った。
Aはその敵がいる場所を、先程確認したばかりだ。
胴を斬って、その近くの男が拳銃を構えるより先、Aは男の足を払う。
無防備な喉を、大脇差の切先は鋭く突き刺す。
乱雑に、最早誰の物ともつかない血を浴びた頬を、手の甲でAは拭う。
その中に、投げナイフによる傷からの自分の血が入って居る事は確かだが、生憎血ばかりだ、判別の付く筈も無い。
少なくとも返り血の方が多分にあるだろう、と言う事は、確かだッた。
血の匂いばかりである。
火薬や鉄の匂いもするが、鉄なのか血なのか、屍の生臭い匂いなのか、もう嗅覚は全く使い物にならない。
(＿＿ひとらん)
Aは先程見た、ひとらんらんと大男の一騎打ちを、瞼の裏に映して居た。
あのひとらんらんだ、不安の類など全く無用だろうが、少しは心配してしまう事も許して欲しい。
動きの鈍ったAに、鋭い蹴りが飛んでくる。
Aはそれを寸での所で後方に跳び、回避。
(＿＿その心配より、自分の方を何とかしろ、ってか)
決して相手は弱く無い。兵の練度としては良い方だ。
だが、このような討ち入りのような形で敗北すると、流石に我々国最高幹部の名に傷がつく。
『想定外』を跳ね除けてこそ、最高幹部の名を冠するのだ。
恐ろしく面倒な事だが、『名』とはそう言う理不尽な命題をすまし顔でこなすためにつくのである。
こう言う肉弾戦で戦力になる為に最高幹部の一つ『空軍元帥』の職を貰った訳ではないが、無知の市民とは言え、不安の付け入る隙を与えぬのは、当然の事。
それ位はできる。
空軍元帥と言う軍人で、元空賊なのだから。
Aは自分の甘さに失笑しながらも、得物を振るう。
紅く、衣装を血に染め上げながら。
.
.
手の中で、
遠心力を得たそれがひとらんらんを襲うが、彼はそれを軽く避け、刃を滑らせる。
向う側も予想していたのだろう、さっと離脱して、とん、とん、と爪先で地を蹴っている。
屍ばかりである。
未だ乾かぬ血を踏みながら、ひとらんらんは刀を構え直した。
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遥彼方 - 七瀬さん» 感想有難うございます。返信遅くなり申し訳ありません。貴方様の様な丁寧にお読み下さる読者様がいらっしゃるので、此処を未だ覘いてしまうんですよ(笑)。此方こそ本作に出会い楽しんで下さり有難うございました。霊圧消えがちですが宜しければ見守って下さい(笑)。 (2022年9月2日 3時) (
レス) id: db6f42df22 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬 - （矢印があっちゃこっちゃしてますすみません）遥彼方様は度々「二桁にいかないように」と仰っていましたが、一度思いっきり書いてみて欲しいです笑 この作品で初めて貴方様の事を知ったので、これから作品巡回しようと思います！最後に。完結有難うございました。 (2022年8月3日 20時) (レス) id: 53c0dcf46a (このIDを非表示/違反報告)
七瀬 - ↓日本語の良さと言いますか、それを存分に引き出す表現方法や言葉選びには只々感服するばかりです…更にストーリー展開や登場人物のキャラ立ちも本当に素晴らしいです…！htrnnのカッコ良さに惚れました。登場人物の方の口調が凄く好みです、やばい。↑ (2022年8月3日 20時) (レス) id: 53c0dcf46a (このIDを非表示/違反報告)
七瀬 - 完結後二年も経った作品にコメントを残してしまうのは自分でもどうかと思いますが、貴方様の作品に深く感銘を受けた故、お許し下さい。遥彼方様の書かれる文章に一目ぼれしました。↓ (2022年8月3日 19時) (レス) @page48 id: 53c0dcf46a (このIDを非表示/違反報告)
774号（現在稼働中）(プロフ) - 遥彼方さん» おぅあ…コメント返信ありがとうございますっ!774です!このお話は永久に心の中に置いておきたい、まさに名作だと思います!遥彼方様、どうかお元気で! (2022年4月18日 16時) (レス) @page41 id: e50bf9dc91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2020年3月8日 0時
