１３９ ページ4
グルッペンは少し考えたが、恐らく某国の言葉だろう、と思った。
言語学には一応多少の憶えがあったが、解らない。
「オスマン、之読めるか？」
「無理」
オスマンは即答した。
外交長官として外交の場に出る彼も、不可能らしい。
通訳があるし公用語の都合で、多言語を無理に操れる必要はない。其処等辺に詳しいのは、寧ろオスマンよりも鬱先生である。何故か彼は多言語に造詣がある。
オスマンが何故いい貿易相手であるはずの某国の言語を操れないかと言えば、最近になって急成長したため。取るに足らぬ国だったが、めきめきと力を付けて来たのだ。
「大先生は？」
「今ちょっと出とる。……エミさんはゾムの方に掛り切りや」
「嗚呼」
グルッペンは密かに納得した。
エミさん、と呼ばれたのも幹部の一人だ。
博識なので、言語学にも幹部の中ではトップを争って詳しいだろう。だが、その判別も無くグルッペンの手に渡ったのは、そう言う事情のためらしかった。
「……之」
唯一読める、一等最初に記された名。
「……嗚呼。……クラウディアちゃん宛や」
編んだ髪、印象的な泣き黒子。
人当たりの好い穏やかな笑みに、絶対的な空の技術。＿＿技術の方は、幹部の中でも知っているのは少ない。
グルッペンは彼女の影を瞼の裏に暫し沈思黙考していたが、軈て、言った。
「……同席させてやれ。彼奴は分別のある奴だ」
演算の結果、それが最適と弾かれたらしい。
総統が言えば是非も無い。「解った」とオスマンは頷いた。
「けど、……グルッペン。ちょっと訊いて良い？」
「何や？」
グルッペンから文書を預かりながらオスマンは、すっと冷えるような理知を帯びた目をグルッペンに向ける。
「いつぞに、うちの国に隣国の第二皇子＿＿アルバート皇子が来とったん、憶えとる？」
「嗚呼。……その時、『イーグル』に乗せた、とか言ってたな」
(※『イーグル』……空飛ぶバイク的な物)
グルッペンが記憶を探りながら答えると、「そ」とオスマンは短い肯定。
「如何見ても、余程親しかった。まああの子やから、誰とでも仲良うした結果なんかもしれんけど、……もうそれでは片付けれんやろ」
文書をひらひら見せつける。「あの子『引っ張って』来たんはグルッペンやんな？」
幹部の半分以上は、グルッペンがスカウトした人間だ。
話題の中心のAも、それに違わなかった。
「あの子は、＿＿クラウディアちゃんは、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遥彼方 - こゆきさん» コメント有難うございます！返信遅くなり申し訳ございません。書き手にとっての最上の褒め言葉を有難うございます！今回は文章にこだわって居たのもあって滅茶苦茶嬉しいです。応援、確かに受け取らせて頂きました。之からも楽しんで頂ければ幸いです！ (2020年1月20日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 初めまして。拙いですが心に有り余って仕方ないので失礼致します。文章の書き方が好きです。表現が綺麗で世界観も細かくて、すっと入りやすい文章で、凄いもう伸びろ……って感じです、本当。こっそり応援してます。 (2020年1月17日 22時) (レス) id: 0707af67a4 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 阿月夜衣さん» コメント有難うございます。前作も大変お世話になりました！htrn先輩イケメンに書きたかったので嬉しいです！osさんの処は後悔し気味ですが、そう仰って頂けると救われます。文章褒めて頂いて有難いです！応援確かに受け取りました、之からも楽しんで頂ければ幸いです！ (2019年12月27日 2時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
阿月夜衣(プロフ) - htrn先輩イケメン過ぎませんか?ガチ悲鳴出ましたよ?…青の時から拝読させて頂いていますが､素敵な文の書き方だと思います｡osさんのところはなんか頭の片隅で理解しました｡伝わる人には伝わるのではないでしょうかね｡これからも応援させていただきますね｡ (2019年12月27日 1時) (レス) id: 515131223d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年12月24日 12時
