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一歩、踏み出す毎に、踏んだ床がぐらぐらと揺れて、踏み抜いた様な感覚がした。
Aはそれに苛まれたまま、部屋の出口の方に向かおうとしていた。
只Aの之は、もう殆ど強がりの為と言っても良かった。
半分はAの無意識がそうさせたものだった。
だが、心の為に体が動くと言えど、それには限度がある。
限度を超えてしまえば体は、＿＿脳の言う事など聞かない。
如何にもならぬモノは如何にもならぬと、相場は決まっている。
扉の方から、籠った声とノックがしていた。
もう耳の聾されたAには、聞こえているかも危うい。
膝が笑っている。
殆ど扉など見えておらず、只感覚で、扉の方へ向かっている。
無理に突き動かした体は、急に足元から、崩れ落ちた。
Aの身体は、前のめりに倒れて行く。
フローラは悲鳴じみた声を喉に燻らせた。
オスマンは、細い目を見開く。
トントンは、反射的に一歩、踏み出そうとした。
全て、スローモーションだった。
時の神様が世界の時計の秒針を、全て遅らせて居る様に。
.
＿＿扉が開いた。
空き缶が上から潰される様に、後ろから急に背中を押されたように。
そんな風な格好で、重力にさえ耐えられなくなったAの体は倒れようとしていた。無意識下で緩やかに、Aは体を捻る。
.
＿＿＿一歩。
影は反射的に敏捷に＿＿
Aの身体を掬い取る様に、一本、床と体の間に滑り込ませるように腕を回す。
その機転の為に、Aの身体は床に叩き付けられる事だけは免れた。
このために急に加速してしゃがんだ人影は、刹那に張り詰めた息を、ふぅ、と吐く。
切れ長の涼やかな眼が、腕の中の顔面蒼白のAを見下ろす。
.
「＿＿ひとらん！」
.
オスマンは半分叫んでいた。
扉の先の声に気を取られたのは一瞬で、目の前に崩れ落ちたAの方に意識が向いて居たのだ。
「……此奴、部屋連れてくけど、良いよね？」
ひとらんらんは一応語尾を上げて疑問の形を取ったが、殆ど念押しの確認の様な色をしていた。
何のために此処に来たのかと言う一切を、ひとらんらんは頭の隅に押しやってしまった。
「は、はい！ あの、御一緒します」
フローラが我に返ったように頷いた。
ひとらんらんは然し、フローラの申し出を、「否、良いよ」と断る。
「俺一人で十分だから」
ひとらんらんはぐっと腕と膝に力を入れ、咄嗟に掬ったAの身体を支え直す。
Aが薄く、眼を開いた。
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遥彼方 - こゆきさん» コメント有難うございます！返信遅くなり申し訳ございません。書き手にとっての最上の褒め言葉を有難うございます！今回は文章にこだわって居たのもあって滅茶苦茶嬉しいです。応援、確かに受け取らせて頂きました。之からも楽しんで頂ければ幸いです！ (2020年1月20日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 初めまして。拙いですが心に有り余って仕方ないので失礼致します。文章の書き方が好きです。表現が綺麗で世界観も細かくて、すっと入りやすい文章で、凄いもう伸びろ……って感じです、本当。こっそり応援してます。 (2020年1月17日 22時) (レス) id: 0707af67a4 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 阿月夜衣さん» コメント有難うございます。前作も大変お世話になりました！htrn先輩イケメンに書きたかったので嬉しいです！osさんの処は後悔し気味ですが、そう仰って頂けると救われます。文章褒めて頂いて有難いです！応援確かに受け取りました、之からも楽しんで頂ければ幸いです！ (2019年12月27日 2時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
阿月夜衣(プロフ) - htrn先輩イケメン過ぎませんか?ガチ悲鳴出ましたよ?…青の時から拝読させて頂いていますが､素敵な文の書き方だと思います｡osさんのところはなんか頭の片隅で理解しました｡伝わる人には伝わるのではないでしょうかね｡これからも応援させていただきますね｡ (2019年12月27日 1時) (レス) id: 515131223d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年12月24日 12時
