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『イーグル』は、その動きをいつの間にかゆっくりと静止して居り、宛ら孤独に漂う一つ雲のようであった。
Aは「よっ」と気の抜けた声と共に、ハンドルを巧く手と重心置き場にして、バランスよく座席に立った。
ひとらんらんはAの動きを見て、腰に回して居た腕を何気も無く離したが、何故だろうか、ひとらんらんの様々な武芸の鍛錬の中に培われた第六感は、「厭な予感がする」と叫び続け、その声は心なしか大きくなっているようにも感じる。
「前に寄って、ハンドル握ってた方が良いよ。それと、……まあ、君だからそんな事も、……」
Aはふと考え込むようにして、言葉の端を中空に漂わせた。言葉の行き先を探すように、暫く中空をじッとAは凝視して居たが、軈て、
「まあ、いいか」
と、その先は諦めた。
Aの様子に、延々狙いの解らず首を傾げて居続けなければならないひとらんらんは、ふと、先程の会話が、何の前触れもなく、脳内で再生された。
.
＿＿『昔は、憶えてる限りじゃ、落ちるって言うか、落されてた』。
『[これも修行の一つだ！]みたいな事言われながら、普通に』。＿＿
.
(＿＿まさか！)
ひとらんらんが漸くその『厭な予感』と、Aの狙いに気が付いた時には、Aは穏やかな笑みを浮かべて、
空に身を投げていた。
.
「ッな……ッ！！」
ひとらんらんは咄嗟に手を伸ばすが、その手は虚しくも空を切るのみで、病んだ体はその儘、空の中を突っ切る様に落下して行った。
思わず自分の身のことなど考えもせず、ひとらんらんは体を乗り出して、風の中に自由落下を続けるAの姿を視認する。
如何すれば良い。
ひとらんらんは強い焦燥の中、必死で頭を回した。
少なくとも、今ひとらんらんが飛び降りた処で、二人仲良くお陀仏になってしまう事は、考えずとも、火を見ずとも明らかな事だ。
だからと言って今、一秒の毎に距離の伸びる中、手が届く処か、見当たらぬ縄があったとしても、Aに届くかどうか怪しい。
それにひとらんらんは、『イーグル』に乗ったのもこれが人生の上でも初めて。運転など以ての外である。
(彼奴……ッ！！)
ひとらんらんは歯噛みした。
この瞬間、Aを扶けに行かんと強く望んだ処で、今のひとらんらんには如何する事もできぬのである。
だからと言って、何もしなければ墜落死すると見え切った命をみすみす見殺す様な事は、ひとらんらんには当然できない。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
