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壁に寄っかかって聴いて居たAの慟哭に似たあの言葉の群が、如何もひとらんらんの耳と、頭を支配して居た。
沈み込んだ、悲壮な声。
書記長室に居た＿＿つまり、場にいた＿＿全ての人間が、Aは激しく怒って居たと言った。全員が言うのだし、「激しく」と言うのだから、それは現実に起こった事であり、余程の物だったのだろう、とひとらんらんは思う。
だが、自分が聞いてみたその声は、如何だ。
其処にあるのは、強い嫌悪や激怒ではなく、ヴェールのように静かに広がり波打つ、悲嘆ばかりで。
(……)
ひとらんらんは、余程踵を返そうかと思った。
あの整備士は他言はしないと言ったし、見た処ひとらんらん以外の人間はこの近くに居らず、遠くに恐らく他の整備士であろう喧騒が遠慮がちに寄って来るだけだ。
ひとらんらんとて、その様な事を言い触らすほど野暮な嗜好は無い。
整備士は、フローラが呼んだものなのか、と、ひとらんらんは勝手に思った。
だが、先程の少しの会話の中に、そうでない気もした。
格納庫の話を聞き、自らの目で確かめるため、そして何かあれば対処しようと、誰に言われるでも無く足を運んだのではないかと。
(……少なくとも、彼奴は)
外の道具を取ってくる、と言ったあの整備士は。
ひとらんらんはそんな気がした。
格段意味があった訳でもなく、こんな事を追求して何になる、と思って、直ぐにその思考は取り止めてしまった。
(……外、って事は)
少しは時間があるだろうか。
殆ど無意識下で思ったひとらんらんは、その様に考えた自分自身に気が付き、
(何を、考えてる)
と、自分で自分が解らなくなった。
ひとらんらん自身が一等、困惑して居たのである。
首の裏を乱雑に掻きながら、何かやや思案して居たが、軍靴の足音を遠慮気味にしながら、入った事も無いその中に、足を踏み入れた。
.
「……？」
飛行機の右翼を撫でていたAは、何かに気が付く様にしてふと顔を上げ、手を飛行機から降ろして振り向いた。
「……」
Aは無言であったが、其処に認めた人に、やや驚いて居る様子を見せた。
A自身が半ば放心していた、と言うのも大きい。
「……何で此処に、って言いたい処だけど」
Aの声は、いつもよりも少し弱っていたが、先程ひとらんらんが聴いて居た声よりは随分と落ち着きを取り戻しているようだった。
「聞いてただろ」
Aは自嘲気味に唇を歪めて、言った。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
