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左右不対称の泣き黒子。
ひとらんらんは、Aの顔、況して目元など意識して見た事も無かったから、それに、改めて発見をした気分になる。
未だやや茫然としているようなひとらんらんに、Aは丁度、貰った花弁のように柔らかな笑顔で笑んだ。
黙っている。唯、微笑んだだけ。
だと言うのに、その穏やかな笑みの中に、言葉にはならぬ優しさがある。
黙っていても良い。喋っても良い。
唯、苦も無く、待とうとしている。
Aはつくづく、＿＿ひとらんらんなどは羨ましくも思う程＿＿、『笑う』と言うのが上手なのである。
「……っわ」
ひとらんらんは黙って、微笑を浮かべて居るAの頭を撫でた。少し乱雑に、だが、丁寧な優しさを損なわぬまま。
その手つきは、全くひとらんらんもAも意識した事も無く、互いに小指の先程も気付いても居ないのだが、＿＿少しく、似通う部分があった。
「それ、如何すんの？」
「え？ 嗚呼、……圧して、挿む」
手の中の花弁を見つめながら、Aは少し考えて、答える。
「栞？」
「かな」Aはひとらんらんの予想に、余り詳しい用途まで考えてはいなかったのだろう、曖昧な表現で頷いた。
「それなら、花にしたらいいのに。落ちてるかな」
梅枝でも無いから、余り折りたくないのもあって、ひとらんらんは腰を折り曲げるように地面の方を注視した。
「良いよ、咲いてる花も勿論奇麗だけど、散るのがこんなに奇麗な花、初めて見たから。花弁で良いの」
その背に、声に微笑を乗せてそう答えた。
Aは手の中の花弁を見詰て居る。
「全然普段使わないけど、持っててよかった」
そう言うと、空いている片手で小さな手帳を胸のポケットから器用に取り出して、ぱらりと適当な白紙のページを開いて、挿んだ。
Aはなまじっか記憶力が良いために、何かを書き留める、それを後で見るという習慣がない。大概のモノは、何でもかんでも見聞のままに憶えてしまう。
恐ろしい程の記憶能力なのである。
本当に大事そうに、貴重なものを見る様に、一頻り眺めて、ぱたん、とAは手帳を閉じる。
ひとらんらんは姿勢を元に戻しながら振り向いて、Aを一瞬見上げた。
同じ様に、大事なものをしまう様に、手帳を丁寧にしまってから、Aは数歩だけ桜の大木から離れ、そして。
とさっ。
膝から崩れ落ちる様にして、後ろに倒れた。
「え！？」
患いを知って居る為にひとらんらんは動揺した。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
