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何度か瞬きをすると、その寝惚け眼に現実が映り込んで居た。
カーテンの向こう側で、太陽が既に自らの仕事に着手している。成程、今日も朝がやって来たらしい。
人と言うのが如何感じ、どんなに願っても、やっぱり一日は24時間で、きっかり朝が来るのである。
いっそ、ずっと真夜中なら。と考えもしたが、今の彼女に永遠の夜を耐える事が出来るのか、と尋ねられれば、きっと心細さと物思いに押し潰され、如何し様も無いのだろう。
体を起こし、真白のシーツを剥いでから、備え付けのスリッパを履く。
カーテンを開け、朝日に目を細め、朝焼けを暫し見詰めてから、部屋の方へ踵を返す。
幹部の部屋は勿論、この城塞内は常に完璧な空調管理がなされており、その御蔭で快適な温度が常時保たれている。
此処に住み始めてと言うもの、彼女は夜の寝苦しさ、朝の肌寒さと言う物に全く無縁になってしまっていた。
事務的にてきぱきと朝の支度を手短に済ませる。ルーチンワークに苦労するような日常は、流石に過ごして居ない。
服を着替え髪を編み、編み上げのブーツにジャケットを羽織る。
手袋を嵌める。
そうすれば、実に簡単な事に『A=クラウディア元帥』の完成だった。
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準幹部以上にはそれぞれ、私室と『執務室』が与えられる。基本的にそれ程の地位に登れば、待遇面において不安要素の一点も無い。
Aは不用心にも鍵をかけていない執務室に入り、扉に向かい合う様に設置された書き物机の方に歩いた。
いつも通りに、机上に放置された書類。
Aは机の上に書類など、業務終了時に全て片付けるので存在する筈も無いのだが。
椅子の方へ歩いて回り、書き物机の後ろ、重たいカーテンを上げる。硝子一枚先で、薄く棚引く紫の雲や目に痛いほどの朝日の光が、朝を回して居る。
夜と朝の混在する空を見詰ていたが、そうばかりしても居られないので、Aは机上の書類を手に取り上げ、さらりと目を通した。矢張りこちらもいつも通り、愚にもつかない雑務である。
別にAとて、このような溝浚いの様な業務を行いたい訳ではない。
仕事と言う一面では無駄事を愛するような心を持合せても居なければ、眼にもつかない潤滑油になる事を態々望む様な殊勝な性格でもない、とAは思う。
ならば何故そんな事をするのかと問われれば、「そうせざるを得ないから」と言うだけだ。
決して地位が低いためだとか、その様な話ではない。
その理由は。
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遥彼方 - saeniさん» 有難うございます!すぐに行きます。質問の方ですが、チャット行為に当たってもまずいのでHPを作りました。お手数おかけしますが、此方でお待ちしております。https://uranai.nosv.org/u.php/hp/qanda/ (2022年3月20日 18時) (レス) id: db6f42df22 (このIDを非表示/違反報告)
saeni(プロフ) - 返信ありがとうございます。簡単にではございますが、ひとつ作品を執筆致しました。普段はd!等でなくオリジナルを執筆しておりますので、キャラに違いがあったら申し訳ありません…!!遥彼方様はどのようにして言葉や医療系の語を学ばれたのですか?教えて頂きたいです。 (2022年3月20日 4時) (レス) id: 5899b2fc5f (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - saeniさん» コメント有難うございます。お褒め頂き大変光栄でございます。私も勉強中でして、貴方様の作品も宜しければ是非拝読したいです。小説の事ですが、未熟の身でお話しできることもそうありませんでしょうが、どうぞ気軽にお聞きください。 (2022年3月20日 2時) (レス) id: db6f42df22 (このIDを非表示/違反報告)
saeni(プロフ) - 初めまして。コメント失礼致します。遥彼方様の小説本当に好きです。自分も文字を書く身なのですが、遥彼方様のような素敵な文章を書かれる方に出会えて幸せです。これからも応援しております。もし宜しければ小説について色々お話お聞きしたいです。 (2022年3月9日 9時) (レス) id: 9e65708fc2 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - らいはいさん» コメント有難うございます、返信遅れて申し訳ありません。貴重なご意見を誠に有難う御座います。余り言葉を固くしたつもりはありませんでしたが、内容の事は特に私も力不足を感じている次第です。今後の執筆の参考にさせて戴きます、お教え下さり有難う御座いました (2020年2月21日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥彼方 | 作成日時:2019年10月15日 2時