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小さな鞄に財布と携帯をいれると、店に居た健人くんに声をかける
「じゃあ行ってくるね」
「気をつけてな」
「はーい」
「ほんとに、気につけるんだぞ」
「分かってるー」
今日は、風磨くんのお願いを聞く日
なんて言いながら、彼に会いたいのは私の方かもしれない
健人くんは色々と念を押してきたけれど、私は気にせず待ち合わせ場所の駅へと向かう
風磨くんはとても、人間臭い人だと思う
だからなぜか、彼と話すとこの世界が少しだけ明るく見えるんだ
いつも店に来る時よりカッチリとした服と長い薄手のコートを着て、風磨くんは立っていた
少しダルそうに壁にもたれかかって携帯を触っている横顔
「ふーまくん」
そう名前を呼べば、パッと画面から顔を上げて嬉しそうに微笑む
「ごめん、お待たせ」
「全然。今来たとこ」
イケメンが言うお決まりの文句で笑うと、2人並んで改札をくぐる
風磨くんは、海が大好きらしい
この時期はまだ水は冷たいだろうから、中に入ることはできないけれど
海の見えるお店でランチでもどう、と彼は言っていた
初めてのお出かけに重すぎず軽すぎずの絶妙なラインをいく人だと思った
「Aちゃん、いい匂いする」
「…へ？」
「あのお店の匂い。花の香りめっちゃするね」
不意にそんなことを言われ、自分の服の袖を匂ってみる
両親に感じた匂い
健人くんに感じた匂い
私も、するのかな
「…どうした？」
「風磨くんはさりげなくグサッとくること言うよね」
「ぇ、なんかいけないこと言った？ ごめん」
そういう意味で言ったわけではないのに、彼は分かりやすく焦り始めた
電車がホームに入ってくる
その風で、彼の髪が揺れる
「私からそんな匂い、するわけないんだよ」
私が漏らした声は、電車の音に掻き消されて彼には届いていないだろう
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えつ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです＾＾続編もよろしくお願いします！ (2019年4月24日 23時) (
レス) id: 94efd89660 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - はじめまして。この作品すごく好きです！一気に読んでしまいました。移行後の続きを楽しみに待ってます。 (2019年4月24日 17時) (レス) id: 88ef7968ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えつ | 作成日時：2019年4月6日 22時
