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私の名前が呼ばれて立ち上がる
お金はマリちゃんからもらったものと、じゃがいもを買ったお釣りだけだ
足りるか足りないかの、瀬戸際である
「お会計4800円になります」
この時ほど、保険証を持っていなかったことを悔やんだ日はないだろう
腹を刺されたようにお腹に手をやって顔をしかめ停止した私の後ろから手が伸びると、5千円札が目の前に置かれた
「5千円お預かりします」
「ぇ、ちょっと待ってください。いくらなんでも、払ってもらうわけには…」
くるっと向きを変えて彼の顔を見る
健人くんより少し大きい程度の背丈
どうして彼がそこまでしてくれるのかすら分からなかった
会計のお姉さんは既にお釣りの200円を手に持っていて、彼がそれを受け取る
「ほら、早く帰るぞ」
「ちょ…ちょちょ、ほんとに、申し訳ないですし…」
「持ってねぇんだろ」
「それは…」
「俺が無理矢理連れてきたようなもんだし、いいよ別に」
優しさと、少し意地悪なのが交互にやってくる人だと思った
病院の出口に向かって歩くその背中は、なぜかとても大きく感じた
「優しいんだね、栗くん」
心の中で呼んでいたあだ名を口に出してしまった時、思わずあっと口を結んだ
しかしその努力は虚しく、彼は吹き出した
「栗くんってなに笑
ふーま。菊池風磨。覚えて帰って」
フハハッと笑うその笑顔は、なんだかとても親近感が湧いた
口だけは悪いけど、悪い人ではないみたい
「…風磨くん。ね、今度うちの店来てよ、お礼したい」
「お前んち何屋？」
「……花屋」
「へぇ〜」
"うちの" なんて言ってしまったことを、今更ながら恥じる
あの店は、私の店ではない
両親の店
そして、健人くんの店
風磨くんに店の位置を教えると、絶対行くと彼は嬉しそうに笑った
「じゃあまたな、Aちゃん」
病院で呼ばれた時に私の名前を覚えたらしい彼は、手を振ると去っていった
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えつ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです＾＾続編もよろしくお願いします！ (2019年4月24日 23時) (
レス) id: 94efd89660 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - はじめまして。この作品すごく好きです！一気に読んでしまいました。移行後の続きを楽しみに待ってます。 (2019年4月24日 17時) (レス) id: 88ef7968ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えつ | 作成日時：2019年4月6日 22時
