47 ページ3
彼女が運ばれたあと私たちはダンスなど当然楽しめるはずもなく、トントン様が手配してくれた部屋に集まっていた。
「Aさん、これ…」
そっと肩にかけられたのはトントン様の上着だった。
「寒いやろ」
「ありがとうございます。でも…」
「俺は平気。むしろ暑いくらいや」
そう言って笑うトントン様。
けれど元気はない。
それもそのはず。
その原因は部屋の隅で椅子に座り、項垂れたままのグルッペン様だ。
バラ園の君についていくことは叶わず、医者に待機しているよう言われた彼はあの場から動くことも出来ず、仕方なくゾムやコネシマさんが引っ張るようにしてここへ連れてきた。
「A、大丈夫か？」
「ゾム…うん、平気。ゾムは？パーティーに戻らなくてもいいの？」
「あんなとこおったら目がチカチカしてしゃーないわ」
どかっとソファーに腰を下ろしたゾム。
ふと、手を見つめ「軽すぎや」とぽつりと呟いた。
「あんな、悪かったんやな」
ゾムもまた、彼女の細さに驚いたようだった。
「グルッペンは、知ってたんかな」
病気のこと。
「…知っていたと思うよ」
そう彼は、彼女のいちばん近くにいた。
だから知っていたはずだ。
けれど認めたくなかったのだ。
日に日に弱っていくカノジョの姿を。
トントン様が水を差し出すも小さく首を振る。
あんなに弱々しいグルッペン様の姿は初めて見る。
それほどまでに、グルッペン様の中で彼女の存在は大きかったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4918人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろねこ????(プロフ) - ローザちゃんが最後まで優しかったのとちゃんと親友だったってわかるところ感動しちゃった……好きです…… (3月14日 22時) (
レス) @page13 id: 265c011d20 (このIDを非表示/違反報告)
みるく亭 - アッアッアッアッ（過呼吸） 最高…！ (11月14日 16時) (レス) @page13 id: ee3f76fabf (このIDを非表示/違反報告)
俺 - 深夜に失礼致します。すごく、内容もしっかりしているし、感動的で、泣いてしまいそうな程いい話でした！この作品を見つけられてよかったです！！！ (11月3日 0時) (レス) @page13 id: 93217855e3 (このIDを非表示/違反報告)
フレンチクルーラー(プロフ) - 久しぶりに読み直してうるうるしちゃった。やっぱり好きデス。番外編を首を長ーくして待ってます (7月5日 23時) (レス) id: 2e81a6143c (このIDを非表示/違反報告)
いちごおしちゃん☆(プロフ) - カカオ豆さん» あの、部外者で申し訳ないのですが検索避け、も言うものをした方が良いと思います。その3人ならわたしもやっているようにhtさんosさんniさん等をした方が良いと思います。作者さんによっても変わりますが一応注意させて貰いました。不快に思いましたらすみません (2023年3月31日 21時) (レス) id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らに
| 作成日時：2021年6月23日 8時
