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慎太郎side
北斗はもう歩けない。
その事実を目の当たりにしてしまった今
俺はどうしていいか分からなかった。
みんな俺のせいじゃないって言ってくれるけど
そんなの嘘に決まってる。
俺がもっとちゃんとしてれば
北斗はこんなことにはならなかった。
怪我したのが俺だったら良かったのに。
俺はいたたまれなくなって
トイレに行くと言って病室を出た。
病院の中庭を歩いてみても
頭の中はずっと北斗のことばかり。
北斗の動かない足
受け入れざるおえない真実に絶望する北斗の顔
無理に明るく喋る北斗の声
全てが脳裏にこびりついて剥がれない。
俺さえいなければ北斗はこんなことにはならなかった。
俺さえいなければ…
俺はこのまま生きている資格なんてあるのかな…
俺は中庭の奥の人気のないベンチに腰をかけた。
ため息をつくと涙がボロボロと溢れてきた。
自分でもコントロールできないし
これが何に対しての涙なのかも分からない。
ただただ涙が止まらない。
「お兄ちゃん大丈夫？どこか痛いの？」
突然俺は声をかけられた。
顔を上げると学校低学年くらいの女の子が
心配そうにこちらを見ていた。
その子の手には点滴が吊るさがっていて
鼻には酸素チューブがつけられていた。
慎「ありがとうｸﾞｽﾞｯお名前は？」
「じゅり！お兄ちゃんは？」
慎「お兄ちゃんは慎太郎っていうの。よろしくね。」
じ「うん！お兄ちゃんなんで泣いてたの？」
慎「お兄ちゃんね…悪いことしちゃったの。
お兄ちゃんのせいで大切な人が歩けなくなっちゃったの。」
じ「でもじゅりにはお兄ちゃんが悪い人には見えないよ。」
慎「そっか…ありがとう。じゅりっていい名前だね。
お兄ちゃんの友達にも樹っていう人がいるの。」
じ「おそろいだね！あ！じゅりもう行かないと！
お兄ちゃんばいばい！」
慎「うん。ばいばい。」
あんなに小さい子が必死に生きようとしているんだ。
なのに…こんな俺がのうのうと生きてていいのかな…
俺は無意識に屋上に向かっていた。
ふとスマホを見ると
メンバーからたくさんの連絡が入っていた。
俺を心配するものや
俺は悪くないっていう内容のものばかりだった。
その優しさが今の俺には苦しい。
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作者名：ひとみ | 作成日時：2023年4月20日 23時
