＋＋＋＋＋ ページ36
.
「ぬらりひょんに、鯉伴に、乙女。
雪麗に鴉天狗、牛鬼や狒々……
奴良組の全てが、私の宝物だ」
「A？」
名を呼んで脳裏にその姿を浮かべてみる
ここでの人間は、私だけ
ぬらりひょんと同じく周りの皆は初めてであった頃と微塵も変わらない姿が浮かんだ
「ぬらりひょんと出逢えて、良かった」
「……そりゃあワシの台詞じゃい」
ぬらりひょんに出逢わなければ、こんなにも幸せになれなかっただろう
毎日笑顔で暮らせなかっただろう
生きることをこんなにも、楽しいとは思わなかっただろう
「ぬらりひょん…鯉伴…」
「ん？」
「なんだ、おふくろ」
「……ずっと、二人の傍にいたいのに…
すまないな……私はもう」
もう、生きられないようだ
「だぁいじょうぶじゃ。
奴良組の女主と言われるあんたはまだまだ生きられる」
「親父の言う通りだぜ」
なんと、優しいことか
でもその優しさが今は少し心苦しい
ぬらりひょんも鯉伴も、分かってるんだ
私の命の終わる音が
静かに消えていこうとしている、この音が
「珱も、私より先に逝ってしまったからな」
私の妹、可愛い可愛い珱は数年前、天寿をまっとうし私より一足先に向こうへ逝ってしまった
悲しかったけれど、私は不思議と涙は出なかった
珱の死に顔が、とても穏やかで幸せそうだったからだろうか
あの子の残した子供たちや孫たちが居たからだろうか
…ぬらりひょんと出逢い、私たち姉妹は全てが変わったんだ
私も珱も、心から愛する人ができて、子に恵まれたのだから何も寂しくはない
ふわりと風が吹いて、桜の花びらが私の元へと届く
「……珱……」
私を迎えに来てくれたのかな
「……ぬらりひょん、もっと、強く抱き締めて」
「……あぁ」
老いた体には少しばかり痛いくらいの力加減で抱きしめてくれるぬらりひょん
もう、これが本当に最後だ
「鯉伴」
「なんだ？」
「きっと、これからお前にはたくさんの試練が待ってると思う」
「……」
「でも私は信じてる。
お前は、私とぬらりひょんの子だ。
鯉伴なら、越えられない壁なんかない。
越えられないなら、そんなものぶち壊せばいい」
「……そういう問題だっけか？壁って」
あれ？と鯉伴は苦笑いする
「……ついこの間、乙女を連れてきた時は随分とびっくりしたけど、あの子はいい子だ。
大切にしてやるんだよ」
「当たり前だろ？
俺の嫁だぜ、大切にしねぇでどうすんだ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 424人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「家族」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜蝶(プロフ) - 本気で最後に涙が止まらなかったです！続編をこれから読みますが、今度は嬉し泣きしそうですね(*^^*) (2020年3月21日 4時) (
レス) id: 226c36eb4d (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 続編嬉しいです！！私と皆さまの声が届いたようで、本当に嬉しいです！！ (2020年1月11日 23時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ことみ(プロフ) - 続編決まって楽しみです！！ (2020年1月11日 19時) (レス) id: eb62bdd2ac (このIDを非表示/違反報告)
紗那(プロフ) - 初めまして。この小説すごく好きです。なのでこれで終わりにして欲しくないです。続編をお願いします(^^) (2020年1月10日 14時) (レス) id: fa79a8dffc (このIDを非表示/違反報告)
菊 - 続編希望です！ (2020年1月6日 21時) (レス) id: add80d975f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江
| 作成日時：2019年9月24日 16時
