ひとめぼれ ２

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膨れてる俺の手首、重岡さんが掴んで。


引き寄せられたかと思たら、
ぎゅっと抱きしめられた。


「ほんま嬉しかった」


耳元に聞こえた、溶けそうに甘い声。


俺がこの人を幸せな気持ちに出来るんや。


そのことが俺を幸せにする。


「俺、重岡さんが好き。
返事、遅くなっちゃったけど・・・
大好きって言えるようになってから、
伝えたかってん」


思わず出てしもた、


大好き


自分の声に照れてしまう。


「うん、ありがと」


もっとはしゃぎそうやのに、
重岡さん、ちっちゃく呟いたきり。


顔見たくて、少し肩を押したけど、
離さんとばかりに、もっと強く抱きしめてくる。


「痛いって、重岡さん、一旦離れて」


「無理」


「なんでよ」


「ちょっと今，顔見んといて。
腑抜けてるから」


「・・・余計、見たくなっちゃった」


目の前にある、綺麗な首筋にキスしたら。


「うえっ？！」


重岡さん、びっくりして、力緩んだ。


その隙に腕の中をすり抜ける。


そこには、

照れて仕方ないって感じの、
それでいて、今にも泣き出しそうな、

初めて見る重岡さんがおって。


俺まで、胸がじいーんて、響き出す。


「顔見るな、言うたのに。
神ちゃん、悪い子やな」


「重岡さん、泣いた？」


「泣いてへん！ちゃんと堪えてるから！」


「泣きそう？」


「そら感無量やろ。
伝説を覆してんで？」


「伝説て何？」


「誰にも落ちひん、
難攻不落の神ちゃんの心、振り向かせたこと」


「なんよそれ・・・
そんな伝説知らんしな。
でも重岡さんが嬉しいの，嬉しい。
笑っててやあ。笑窪見たい」


「あかんて。
俺をどうするつもりやねん。
これ以上は、無理やって！」


「何が無理？」


「全部や」


俺も全部、無理・・・


そう思た時、不意打ちに、キスされた。


ふわって、一瞬だけで離れて。


目配せして、微笑み合う。


自然と、すぐにまた重なり合った。


閉じた瞼の裏には、
イルミネーションの眩い光が、残ってる。


泣きたいぐらいの幸せ。


重岡さんが、俺にくれたもの。


俺も、重岡さんに同じだけ、届けたいな・・・

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