ひとめぼれ ２

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普段なら、
寒いだけのこの国の冬景色が、

こんなに美しく、この目に映るとは！


今なら、詩人にでもなれそうや。


気付いたら、スキップしながら、
鼻歌出てくる、この浮かれ具合。


淳太には、呆れられまくってる。



「事実上付き合うてるんなら、社長に報告せえ」


撮影の後、
忘年会行く前に、

淳太に引き摺られるようにして、
いざ大倉社長の待つ社長室へ。


そういや大倉社長って、小瀧と別れたばっかりやん。


そこに、この幸せ報告、ないよな。

うん、ない。


社長室の前で、


「淳太！今度にしよ」


踵返そうとしたとこに。


社長室のドアが開いて。

大倉社長本人が、顔を出しはった。


「しげ、何を今度にするねん」


もう逃げ場なし！


「実は、」


「こいつ、メイクの神山くんと付き合うてます。
その報告に」


淳太め。先に言いよって。


「ふーん。
良かったやん。
せいぜい嫌われんようにな」


あれ？

れれれ？


なんか思ってたんと違うリアクション。


「社長、認めてくれはるんすか？」


「認めるも何も。
けど、気をつけろや。
神山くんもこの世界の人間やし、
芸能人と付き合うことがどんなことかは、
分かってるやろうけど」


「はいっ、ありがとうございますっ」


「んで、しげ、ちょっと来？」


手招きされて、社長室に連れ込まれた。


「あの子，どうやって落としたん？
誰にも落ちひんて有名やで？」


なんや、興味津々やんけっ。


「うんまあ、単なる正攻法っす。
押して押して、引かずに押して」


「ほー。
まあ、幸せなことはええっこっちゃ、
いつから付き合うてんの？」


「２７の舞台の打ち上げの日？
いや、その翌日？」


「なんや、はっきりしいひんな」


「実はまだ付き合うてるか微妙なんす。
大倉社長どう思います？」


結局、相談乗ってもらったし。


「それ、まだ付き合うてないやん。
相手に好きとも言われてへん、
最後まで、いたしてもない」


「ゔゔ・・・」


「ちゃんと恋人なってから報告来ぃ」


ひらひらと手を振られて、
追い払われてる。

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