ひとめぼれ ２

１０ ページ3

「重岡さん、なんで走るんですか？」


神山くんに呆れられて、笑われた。


車まで来て、

助手席のドア開けて、
神山くんを押し込むようにして、
自分も運転席に乗り込んだら、

やっと一息つけた。


「ごめんな、出てってもうて。
大丈夫やった？」


「はい、僕の方は。
重岡さんこそ大丈夫ですか？」


「うん、俺は平気」


答えて、ふと、神山くんの顔見て。


あまりの可愛いさに、一瞬で、
心ん中で、なんか弾け飛んだ。


酔うてる時の神山くんは、普段より可愛いさ増し増し。

色気もセット。


「神山くん、お酒、飲んだ？」


「ちょっとだけです。
俺、弱いから」


「やんな。
俺もあんま強ないけど。
ちょっと心配やってん」


「重岡さん、迎えに来てくれて、ありがとう」


いきなり改まって言われた。


「いや、俺が会いたかっただけやから」


「ちょっと困ってたから。
助かりました」


「困ってたって？」


口説かれとった、いうことよな？


「二次会、断りたかっただけです。
専門学校ん時の友達で。
ええ子らやねんけど。
今日はみんな酔うてたみたいで。
なんかいつもより強引やって」


「大丈夫やった？
なんかされてへん？
怖い思いしてへん？」


嫉妬心、隠されへん。

まだ俺のもんとちゃうのに。


「大丈夫です」


「良かったあ・・・」


抱きしめたいのを、ぐっと堪える。


けど、髪には触れてしもた。


「怖い思いしたら、
いつでも俺呼び？」


ほんまは、

心配やから、
男だらけの会には、
あんま行かんといて欲しいけど、

束縛彼氏にはなりたくないしな。


こくんってうなづいてさ、


「迎えに来てくれて、嬉しかった」


言うてくれてん。


あかん、じんとくる。


俺、神山くんの彼氏や思てええんよな？


車を走らせる間、いろんな話をした。


仕事のことが、まあ、ほとんどやねんけど。


ちょっと遠回りしたりして。


お互いの間に、甘い空気が流れてる。


けどそれは、まだ、


ほんの些細なきっかけで、

壊れてしまいそうな、


危なげな関係。


包まれた薄い被膜を破らんように、

守っていきたい。


何よりも、大切に・・・

理由。→←９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す