ひとめぼれ

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俺、そんな、ちょろくない、はず・・・


「神山くん、どうした？」


黙ってしもた俺に、
重岡さんが問いかける。


「何も。
やっぱりチョコバナナ最高やなって」


「半分こしよな？」


いちごパフェ味、気になるし食べたいけど、
重岡さんが口つけたもの食べるのは・・・


意識してまうから、あかん。


「良いです。もうチョコバナナだけで充分やから」


「どうしてんな、拗ねた顔して」


重岡さんが優しく目を細める。


嫌や。


そんな愛おしげな瞳で俺を見んといて。


ぐらぐらしてまうから。


それは声にならへん。


「拗ねてません」


「素直やないとこも可愛ええけどな」


「嘘ばっか。
重岡さん、困った顔してる」


「困ってるけど、
神山くんになら、困らされてもええ思てる」


「何言うてんの」


「欲を言えば、俺がご機嫌にさせたい。
神山くんの笑った顔、最高に可愛いから」


重岡さんは、ずるい。


きっと、俳優さんやから、

こんなシチュエーション、お得意やねん。


きっと、それだけ。


「・・・そういうの、言わんといて下さい」


恥ずかしなって、俯いてまう。


嬉しいくせにな。


俺、自分で思てるより、ちょろいみたいや・・・


「あ、照れたな？可愛え」


頭の上で聞こえる、クレープよりも甘い声。


「やから、可愛い言わんといて」


俺が拗ねたかって、
ほんまは、重岡さん、平気やねん。


「はい。
アイス溶けてまう前に食べ？」


にこにこの笑顔で、差し出されたクレープ。


意識してるって気取られたくなくて。


平気なふりして、齧ってみた。


「・・・おいひい。何これ、やば、
俺の知ってる苺の数倍美味しい」


思わず、本音が溢れ出た俺に、


「可愛え」


重岡さん、イケメン俳優、形なしのデレ具合。


「またそんなん言うてる」


「え？俺、口にしとった？」


「とぼけて」


「俺もチョコバナナちょうだい」


あって思う間もなく、
重岡さんの顔が近付いて、
パクって齧られてしもた。


真っ白な歯が溢れる、おっきな口元。


なんでか、いつも、目が離されへんなるねん。


「神山くんと、間接ちゅうや！」


俺の思うてたこと、口にするから。

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