ひとめぼれ

大好きしかない。１ ページ22

赤side


舞台は盛況のうちに幕を閉じた。

いろんな人が褒めてくれはったけど、

神山くんに一番凄いって思われたい。


男って単純よな。


背伸びして、

クリスマスイブやし、
郊外にある、
有名なフレンチレストランに、

神山くんを連れて来た。


裏手にある駐車場に車を停めて、
アプローチの小道を抜けて行く。


ヨーロッパに迷い込んだみたいに、
洗練された一角。


いざ、重厚な扉の前まで辿り着いたのはええけど、
慣れへん敷居の高い雰囲気に、そわそわ。


ほんまは、ラーメン屋と焼肉屋が主戦場やって、
神山くんにも、バレバレかもしらん。


神山くんも、ちょっと、緊張した顔してる。


「重岡さん、こんなええお店やて聞いてなかったから。
俺、こんなカッコやし、入れません」


「なんでやねんな。
今日の神山くん、ばり可愛ええから大丈夫や。
ちょっと待っといてな」


神山くんを入口のソファに座らせて。


出迎えてくれはった、
制服ビシッと着こなした、お兄さんに声かける。



「予約した、重岡です」


「重岡様ですね。
少々、お待ち下さい」


お兄さん、俺を見て、ちょっと不思議そうな顔してん。

カウンターの奥に引っ込んでって。

しばらくしてから、
大慌てで戻って来るなり、

深々と頭下げられた。


「申し訳ありません。
ご予約、明日とお伺いしておりまして・・・
こちらの手違いかもしれません、
申し訳ありません」


「まじで？」


「申し訳ありませんっ」


「いや、俺が間違えたんかもやし・・・」


電話で予約してんけど、
言い間違いか、聞き間違いか。

証拠なんか、残ってへんし。


けど、どないしよう。


イブやもん、どこもいっぱいやろ。


「あの、席、あいてないですよね？」


「申し訳ありません。
明日、是非是非、お待ちしております！」


「そうっすよね。
すいません。
明日、地方で仕事なんで、
キャンセルになります」


「そうですか。
残念です。
またのお越しをお待ち申しあげております。
あの、これ、サービス券となっております」


食事券なんてもらってもな・・・


このやりとり、少し離れた店の入口で聞いてた神山くん。

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