ひとめぼれ

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痛いのは、心。

そう答えたら、重岡さん、返事に困るやろ？


「どっこも痛くありません」


そしたら、重岡さんさ、悔しそうに苦笑いした。


ほら、この表情。


急に大人の男になる。


どっかにスイッチでもあって、
自由自在なんかて、アホなこと、考えてまうぐらい。


いっつも突然で。


なんか、そわそわしてまうねん。


重岡さん、椅子から立ち上がって、
真っ直ぐに俺を見つめた。


流星とは違う、そんなに変わらへん、視線の位置。


近過ぎて、困るねんて。


俺の頭に、手のひら乗せて。


「痛いの痛いの、飛んでけぇ」


子供に言い聞かせるみたいにするねんもん。


不覚にも涙ぐみそうなってまう。


「なんなんすか、その子供騙しは」


わざと、シラけた言い方したったのに。


「しげちゃんの魔法やで。
また、痛くなったら言うてや？」


ちっとも、めげてる様子なくて。

調子狂うねんて。


「メイクはこれで完了です。
今日は取材、入ってるんですよね。
頑張って下さい」


「ありがとな！
おっ、今日もイケメンにしてくれたな！」


「自分で言いますか、それ」


「でへっ。
神山くんのメイク、
自然でライトにあたっても浮かへんから好きや」


「重岡さんの好みかなって」


「俺の好み、察してくれてんの？嬉し」


「仕事ですから」


「くぅ。
鉄壁やな」


「何がですか」


「とにかく、イブのデート。
忘れんといてな」


「・・・千秋楽の日ですよね。
打ち上げ入るんやないんですか」


重岡さんのペースに巻き込まれるのが、
わけもなく、怖い。


見知らぬ、深いところまで連れてかれそうで。


「流石にイブに打ち上げはないって。
２７日に改めてすることなってるて、
淳太から聞いとるから、大丈夫！
つまり、今んとこ、予定ないってことやんな？」


「・・・」


墓穴、掘ってもうたみたい。


「気楽に考えてや。
友達！まずは友達でええから！」


「・・・重岡さんと僕、仲良くなれる気、全くしません」


「それは分からへんやん！」


話してたら、

ドアがノックされて、
小瀧望くんが入って来た。


俺を見る度に、泣き出しそうな顔になる。

３→←想定外。１

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