156 ページ39
「…た…たすけ…て…！」
花宮さんの絞り出した声がした。
彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
俺は勇気を出して一歩、彼らの方に踏み出した。
先輩の肩を持ってぐっと引き剥がす。
「別に俺、花宮さんと付き合ってなんかないですよ」
そう言ってにっこり笑ってやった。
「そんなふうだから、振られんじゃないの？」
すると先輩は目を見開いて絶句した。
それから盛大に舌打ちをすると、情けなく走り去っていった。
「花宮さん、大丈夫？」
花宮さんの方を向くと、彼女はふらふらと崩れ落ちていくところだった。
「危ない！」思わずそう言うと、衝動的に彼女を抱き支える。
「あの男、ヤバいやつじゃん。怪我とか無かった？」
俺の腕の中にいる花宮さんに話しかける。
彼女は何も言わず、しゃくりあげるだけだった。
「…泣いてるの？」
すると花宮さんは顔を上げた。
大きな目には涙が溜まっていた。
「…こ、わ…かった…！何よあの男…！！」
「もう、いなくなったじゃん」
「……お礼なんて…言わない…わよ」
「求めてないよ、元から」
相変わらず、可愛くない女。
俺は心の中で吹き出した。
勝気で強気なあの花宮さんが、目にいっぱい涙を浮かべて俺の腕の中にいる。
なんだか妙な気分だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花木 悠愛(プロフ) - ゆーさん» コメントありがとうございます！キュンキュンしていただけたなら幸いですー(≧∇≦*)!! (2015年3月22日 17時) (
レス) id: adb19f22ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - キュンキュンしますね*これからも頑張ってください！ (2015年3月18日 17時) (レス) id: bb17b553d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
