十三章『雨ノ神』 ページ48
*
「ゴホン！！」
突如、辺りにわざとらしい咳ばらいが聞こえた。
「儂をあの魍魎から解放してくれたのは感謝するが……。大鵬殿の新しい花嫁はその娘か？」
声がしたほうをみると、いつの間にか、薄い灰色の神をして、真っ白のな着物に群青の帯を締めた老人が立っていた。
長くてふわふわのうねりのある白い髪が地面まで伸びている。片手に老人の身長と同じ長さの、太くて、沢山の節のある木の杖を持っていた。
「あまり、年寄りの前で、乳繰り合うでないわ！」
「はっはっは！ なんだ。助けてやったのに。うらやましいだけだろう？」
大鵬が私を胸の中に抱いて。
それから、からから笑った。
「うっさいわ！」
老人が少し拗ねたようにそっぽを向いたのがおかしい。
老人からは、清らかで涼しげな水の気を感じる。
「あ、あの……申し訳ございません」
たぶん、あの方が雨の神様だって。……そう私の直感が告げていた。
「ほっほっほ。大鵬殿より、まだ幼い花嫁殿のほうが礼がなっておるのう」
柔和な微笑み。とても、優しそう。
対して、大鵬は少しぶすっとしていた。
「うるさい！ 我はAを気に入っているからな。第一お主も、Aの祈りがなければ、この山に捕まったままであったろうに」
「そうですな。大鵬殿は花嫁がいなくては、てんで弱いですからなぁ」
にやにやと大鵬を見る神様はとても楽しそう。
「うるさい！ もうわかっているだろうが、我の新しい花嫁……Aだ！」
そういって、私を岩の地面に卸してくれた。
ざらざらした感触は最初と変わらないけど。
もう、熱くはなかった。
むしろ、仄かな熱が足裏に心地良いくらい。
「お初にお目にかかります。この度、大鵬様の新たな供物として輿入れさせていただきました」
――チクリ。
今までなんともなかったのに。
当たり前に納得していたことだったのに。
『供物』といった瞬間、胸が痛かった。
でも。
なんでなのかはわからないから、気のせいだと思って。
老人へ向かい、ゆっくりとお辞儀した。
「ふむ。幼いのにのう」
少し憐れむような声音だった。
「なんというの名前なのかの？」
「あ……えっと……Aと申します」
はじめて、名乗る自分の名前。
照れくさくて……、少しいうのをためらった。
いうと、心がふわんと温かくなった気がした。
「さて、雨ノ神よ！ 我の花嫁殿の願い……Aの集落に雨を運んでくれ！」
「そうか。A……良い名じゃのう」
そっと微笑まれた。
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一花(プロフ) - Nonさん» （続）しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした（汗） 夢想力は多少あるかもしれません（笑） Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます！ (2014年8月30日 23時) (
レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます！ それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません（続く） (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます！ ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます！ レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます！ (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます！一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか？凄く物語にのめり込めるので大好きです！あと、誉めるのもとても上手いですよね！ (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます！ 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一花 | 作成日時：2014年7月22日 22時
