十一章『集う気、陰陽の理』 ページ43
「……ここ、は?」
見たことのない景色。
ここと、雨乞いがどう関係するのだろう。
戸惑いの眼差しを大鵬に向けた。
「ここは、倭国の一部だが、先ほどまで我らのいた場所からは、ある程度距離があるな」
「倭国の一部?」
「Aが住まう土地の一部であることに変わりはない、ということだ」
「あの荒山の地と同じ?」
確かに、そうかもしれない。
私がいた集落は雨が降らず、大地がひび割れ、褪せた茶色の枯草すらなかなか拝めない……そんな風になってしまったと、翁が言っていた。
大鵬に会った山は、まだ緑があったと思うんだけど。
それは、たぶん大鵬の力のおかげな気がする。
大鵬の屋敷の周りは、全部、彼の気が張り巡らされていたから。
でも。
今、大鵬と立つ岩場に、彼の気はない。
そして。
この地は枯れている。
岩だらけで、苔以外の緑は見当たらない。
「この土地も、確かに枯れている気がする」
「はっはっは。Aは土地の渇きも感じ取ることが可能であったか」
さすがだな、と言いながら。大鵬は私を肩から降ろした。
「あ……」
足の裏に、硬くてざらっとした岩の感触。
同時に。足の裏から、今まで感じたことのないような……熱い気を感じた。
びっくりして、少し、バランスを崩す。
「大丈夫か?」
大鵬が、さっと腕を伸ばしてくれた。
私のお腹あたりを支えて、前のめりに倒れかけてたのを支えてくれる。
「う、うん……」
「なんだ?」
初めての感じた感覚。
たぶん。
不安そうな顔をしていたんだと思う。
気づかわしげな眼が私に向けられていた。
「あ、うん……。なんだか、足の裏を熱い気がどんどん刺激してきて……なんだか、ふらふらして。なんだろう……地震のときに、地面が揺れるような、そんな気が流れ込んできて……」
「そうか」
何故か、ふっ……、と微笑まれた。
「いえ、あの集落はめったに地震なんて起きないし。……揺れても、洞窟の篝火が少しだけぶれて、ほんのちょっと体が揺れたかな? くらいにしか思ったことないんだけど」
「……だけど?」
「うーん。ここの気は、その揺れをすごく大きくして……、体にどんっ! って……、ふらふらするより、下から突き上げる感じで……」
「さすが、花嫁殿だな!」
何故か、満足そうに頷かれた。
それから。
「雲進!」
さっき降りた雲を呼びながら、私の両脇を抱きかかえた。
すいっ、とやってきた雲の上に、私を座らせる。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時