▼ ページ38
「――さて。ここで我は、宣言するぞ!」
大鵬が私を肩に載せたまま、玉座に待機する、二人の神様や、朱ノ姫を見回しながら言う。
「我は此度、Aを花嫁と認め、娶ることと決めた! 今後、Aへの便宜を皆には計ってもらうことになるが、頼んだぞ!」
「……大鵬様のご命令とあらば」
青蘭様がまず、頭を下げた。
「うむ! Aはまだ、青には会っていなかったな。あれは管狐の妖だ。いづれ歳月が立てば、神気も増える……まぁ、我らの中では子どもだな。気軽に青(せい)と呼んでやれ!」
肩の上の私も見上げる形で、朗らかに大鵬は言う。
「……大鵬様の命であれば、俺の名はお好きなようにお呼びください」
(……うーん)
私は苦笑いしてしまった。
言葉は丁寧だけど、物凄く刺々しい。
これは打ち解けるのに、時間がいるかもしれない。
でも。
私は、着替えさせてもらった時の、朱ノ姫の言葉を思い出した。
――『もし、人を嫌うというものがいたとしてもの……それを本心と思うてくれるな』
たぶん。彼女が言いたかったのはこの少年のことだったのだろう、そう思った。
だから。
「うん! 宜しくね、青(せい)!」
敢えて、皆様方が呼ぶようにあだ名で呼んでみたのだけど。
「……」
(……ち、沈黙が辛い)
青蘭は軽く袖をあげただけで、一言も発してくれなかった。
見かねたのか、老師父様が口を開いた。
「青蘭。……儂はのお主の気持ちも分かるつもりじゃが。今はA殿の味方をするぞ。生まれた集落を離れて心細い女子(おなご)に対する対応としては、お主の態度は間違っておるぞ」
「……すべて、人の勝手じゃないですか」
「……。青蘭、お主とて本当はわかっておるのじゃろう?」
「……わかりたくありません。人は弱いくせに、俺たちに弓を向ける。そのくせ、勝手に神とあがめ、祈り、果ては同族を贄に差し出したりもする。……人とともにでなければ生きられないと、大鵬様も、老師父様も、朱も言いますが、俺にはよくわかりません」
「……青蘭」
「……」
老人は悲しそうな顔。
青蘭は、老師父様には丁寧な言葉を使っているけれど、態度は反抗的だった。
「まぁ、老。……青(せい)はまだ幼い。人の本当の力を知らぬのだ。許してやれ」
大鵬が苦笑した。
「そうであるの。……それより、老師父殿! お主自身の自己紹介をしてみてはどうかの?」
朱ノ姫が、気まずい空気を変えようと、明るい声で言った。
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時