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*

「さて、と! 支度はこれで良いの!」

部屋の説明を受けた後。
私は朱姫様と、この家に住まうという九十九たちに着替えさせられた。
今は衣架にあった白い裳と、萌黄の衣をまとって、髪を結い直されているところ。

「ほら! もっとしゃっきり、動けんかのう!」

そう言われて動くのは、雛鳥のような脚を生やした、つげの櫛。
ぴょこぴょこ跳ねて、私の頭のてっぺんから毛先まで、もう何度も往復している。

「まぁ、これくらいで良いかのう?」

朱姫様が私の髪に手ぐしをいれる。さらさらと、気持ちいいほど滑らかに……、彼女の指は私の毛を通る。

「では、次じゃ」

――てこてこてこ。

どこからか。黒塗りに金の紅葉模様のお盆が、櫛と似た脚で歩いてきた。
盆の上には、金の混じった赤い紐の束。そして、銀の花かんざし。
朱姫様が丁寧に簪で、頭の高い位置に髪を結いあげてくださる。
それから、……それでも床すれすれまである髪は、紐で間隔で結んでまとめて下さった。

「うむ! これでよかろう!!」

朱姫様は出来上がった私の姿を見て、満足げに頷いた。
いつの間にか部屋にあった丸い鏡で、私の姿を見せて下さる。

「う……わぁ!」

まるで、お姫様みたいな私が居た。

「どうじゃ?」

気に入ったかのう? と首を傾げた朱姫様に私は深々と頭を下げた。

「こんなに素敵にして下さって、ありがとうございます!」

「ふふ、礼にはおよばぬ。これがわらわの仕事のうちでもあるからのう」

「……お仕事、ですか?」

「そうじゃ!」

朱姫様は誇らしげだ。

「それでも、こんな綺麗な格好……初めてです。朱姫様……本当に有難うございます!」

もう一度お礼を言ったら、

「ふむ。本当にそう思うか?」

何故か質問されてしまった。

「はい! 朱姫様は凄いお方です!」

私は尊敬の目で彼女を顔を見上げたのだけれど。

(……あれ?)

心なしか。少し不満そうに唇を尖らせていた。

「あの、どうかなさいましたか?」

恐る恐る尋ねた。
知らないうちに、何かご不興を買うようなことをしてしまったのだろうか。
神様を怒らせるなんて失礼、あってはならない。
もし、そうならすぐに謝らなければ! そう思った。

でも。

「A……お主がまこと、わらわを凄いと思うのなら、その堅っくるしい敬語を辞めてはもらえぬかの?」

「……はい?」

返ってきたのは意外なお言葉だった。

「大鵬殿ばかりずるいのじゃ! わらわとて、Aと気安く話したいのじゃ!!」

▼→←八章『朱ノ姫の焼きもち』



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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます!  誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時

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