理想のままで【HQ】

体育館 ページ8

春のくせして生意気に暑い。
私は歩いてる途中、耐えられず腕を捲り、裾もまくった。

やっと、学校にたどり着き、私は大きなため息をついて、体育館へ向かった。

その途中途中に、同じ学年の人と何回もすれ違う。
まるで暗殺者みたいな目で私を見たり、クスクスと私を指差して笑っていた。

だから、嫌だって言いたかったのに。


「あ、Aじゃん」


もう少しで体育館、というところで私は名前を呼ばれる。
ビクッとして、私は振り返った。


「ひ、ひさしぶりだね」


と、ニコッと笑って返す。
私を呼んだ人たちは、女子バレー部の人たちだった。


「最近こないから心配してたよー！
てっきり、先生達に言っちゃったのかなーって！」


と、ニコニコとその人達は言う。
怖かった。


「言うわけないじゃん。」

「そうだよねー！言ったら痛い目、会うもんね！
じゃあ、私たちはこれで！練習あるから！」


そう言って、彼女らは歩きだす。
どうせ、練習はしていない。
彼女達はバレー部だけど幽霊部員だった。


また、私は大きなため息をついて歩き出す。

体育館に近づくと、ガラッと開いた扉の中から、ボールが跳ねる音がする。
バレーの音だった。


「お邪魔しまー…」


と、顔をチラッと覗かせる。
緑のネットを垂らしていない為、見やすかった。
ただ、垂らさないと言うことはボールがこちらにフルスピードで飛んでくる可能性があった。


バシン、と言う音とともに豪速球が私の方へ飛んでくる。


「危ない！！」


そう叫ばれ、私は思わず、荷物を地面に落として、両手を顔の前に持ってきた。
そして、手の付け根の骨あたりでボールを返す。


「お…」


案外、上手く向こうに返ったボールを見て、思わず声が出た。


「ありがとうございます…？」


と、ボールを取った人が言う。
謝るところだが、上手くボールを返されて頭が混乱しているようだった。


「あれ、Aじゃん」


無駄に大きいクロが、私の視界いっぱいに入ってくる。


「あ、クロ。どうも。
先に言うけど入部希望じゃないからね。」

「何？マネージャー希望？」


とわざと大きな声で返される。
その瞬間、体育館が騒ついたのがわかった。
私は、彼らがマネージャーを欲しがってた事を思い出した。


「クロ、嫌い。大っ嫌い。」

「え…」


すっごい演技臭く落ち込むクロ。


「嘘だよ。」


と言って、私はにしししっと笑う。
そして、地面に落とした荷物を拾った。

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