理想のままで【HQ】

どんな仕打ちも ページ37

「…ご家族には言ったけど、この病気は他人からの独立、簡単に言えば孤独に晒されることがダメってされてるんだけど…。」


お医者さんは苦笑いを浮かべた。
多分、今日までの話を聞いて「こりゃあ、ダメだわ」と思ったのだろう。

案の定、


「こりゃあ、ダメな生活だね。」


と言われた。


「…でも、別に、生きててもしんどいというか。」


私は少し申し訳なく言う。
生きる理由がないと言うか、とも続けた。


「なんなら、私使って論文書いてもいいですよ。」


とも、言った。

にしても、まさか不治の病に近いにかかるとは。
思いもしない人生だ。
お医者さんが言うには、かかったらストレスがなくても進行し続けるらしい。
それから、お医者さんとは下らない話も混ぜながらこの先の話をした。

チラッと時計を見ると、すでに8時を回っていた。
お医者さんもそれに気が付き、「そろそろ行くね。」と言って病室を出た。

1人になった途端、自分がとてつもなくちっぽけな存在に思えてきた。
小さくて、小くて、今にも消えそうな。
消そうとする力に対して消えまいと必死に抗っているような。

私は、パタン、と布団に顔を落とす。

頭の中に、クロが浮かぶ。

どうせ死ぬなら、頑張らなければよかった。

そしたら、安全に、理想のまま見捨てられることなく人生終わったのに。

あんなこと、言ったからな…。

合わせる顔がないなあ。

まあ…合わなくてもいいか。

きっと、タイプだわって言ってた人が今頑張って口説いてるだろうし。


…でも確かその後、今度ショートにするって言ってたな。

クロは、ロングが好きなのに勿体無い。

切って嫌われちゃえばいいのに。


と少し、黒いことを心の中で言ってみる。
そして、なんてね、と思う。


幸せになるならとっとと、なればいい。

そう言えば、明日どうしよう。

明日も来いって、教室で言われた。

…まあいっか。


どうせ、死ぬんだからどんな仕打ち受けても、例えばそれがナイフで刺されるとかで、失血死で死んだとしても変わらない。

結果は変わることはないんだから。

写真→←夢物語

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す