夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

本来の姿 ページ24

「よっ、芥川さん。」


と、フランクに話しかける私に芥川さんは目を見開く。
真っ黒い体は闇に溶け込みそうだが、満月の今日には向かない。


「…人喰いなのか…？」


とても困惑している。
いや、まあ人喰いなんですけどね。


「まあ…この世界だとそんなところですね。
ところで、もうあなたの部下は足を震わせてますけどそれでもこの作戦、やめないんですか？」

「嗚呼。」

「右手をもがれようが、なにされようが関係ない、と？」

「その通りだ。作戦を遂行するまで。」

「…この状況で？作戦の成功は奇跡めいた妄想すぎません？諦めましょうよ。
彼らは明日の朝まで目覚めない。やめてあげなよ。」


マスクを外した。
私は手を胸の下まで上げて、両掌を空に向け、歩み寄る。


「こう見えて、人を殺すのは苦手なんだ。」


と、彼に笑いかける。
あの頃、前の世界で彼がしたように。白髪の彼がしたように。
黒髪の時も白髪の時も、すぐ笑いかける。
満月が眩しいほど私を照らした。


「どの口が云う。」


と、異能力を彼は発動させる。
やっぱり、私は彼のようにセンスがない。
独りが、合っている。


「…ですよね。じゃあ、一つ条件を。
探偵社に手をかける前に私に手をかけてください。」

「…裏切り者に何が出来る。」

「裏切り者だから、なんでも出来るんですよ。」


私は、また笑いかける。
私はマスクをつける。
そして、マスクの奥の目で彼を刺すように、噛みつく牙のように鋭く睨んだ。


「…えへへ。」

「何を笑っている。」

「喰種として戦う、というか本来の姿で戦えるなんて光栄だなあって。」

「…。」


芥川さんが、急に静かになる。
私は、彼が出した一瞬の殺気を見逃さなかった。

油断と一瞬→←最強でも完璧でもなく普通の

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