あんていく(ご指摘、ありがとうございました。修正致しました) ページ14
「A!!」
と、聞き慣れていたはずなのにすごく懐かしい声と温もりが私も包んだ。
温かかった。
地下や、病室のような無機質な部屋や、喰種の血とは違って、本当に温かかった。
私が、ずっと、欲しかった本当の温かさだった。
そして、冬にされた嘉納の手術から味わって来た孤独の辛さが涙となって溢れてしまった。
嘉納に手術をされてから、異色の喰種として彼のもとにいた同胞からも避けられて、彼の捨て駒としてただひたすら彼の目的のために喰種やヒトを殺して来た。
そして捨てられた先では、アオギリの樹の一員として喰種のために捜査官を殺し続けたのに、誰にも認められずに、避けられ世間話もしてくれる人はいなかった。
会話をすることがなかった。
命令を聞くための言葉しか話すことをしてこなかった。
「トーガぁ…!!」
涙を堪えようにも堪えられなかった。
「寂しかっだぁ…」
「このバカ…。」
と頭にコタンと、ゲンコツが落ちて来た。
でもそれすらも嬉しかった。
それから子供のように、情けなく泣きじゃくった。
落ち着くまで彼女は私を抱いたままでいてくれた。
「落ち着いた?」
「…落ち着いた。」
「よかった。」
と、彼女は私の背中を撫でてくれる。
落ち着いてから気がついたのだが、トーカと一緒に来たのはあんていくのみんなと偶然居合わせた四方さんと月山さんだった。
私が謝りたかった人たちが全員集まっていた。
それと、黒髪の青年。黒髪の青年は初めましてだった。
黒髪の人には何があったかわからないため疎外感とか感じてしまうだろうからとても申し訳ないが、私はトーカの手から離れる。
手を床につけて、私はいわゆる土下座をした。
「本当に、ごめんなさい。みんなの努力を、たった2人のために裏切って。ごめんなさい」
そう、謝った。
私が目を覚ました時に走って来てくれた彼らだが、ここでこの話を許してくれるかはわからない。
沈黙
私は汗がじわっと、滲んだのが分かる。怖かった。
じゃあ何でこんなことをするのか、と聞かれれば答えられない。
しなければいけない気がしたのだ。
「…顔上げなよ。」
と、トーカの声がした。
そして、誰も怒ってなんかないよ、と付け足してくれた。
「アンタが帰ってくるのをずっと待ってた。」
そう言ってくれた。
顔をあげる私を、トーカはわしゃわしゃと撫でた。
「ほら、ちゃんとみんなに顔、見せな。」
私はみんなの顔を見た。
そして、笑って言った。
「ただいま」
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hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» >>また、他にも評価が高い作品が多い中で、この作品を読んで頂きありがとうございました。 少しでも楽しませられたら幸いです。 本当にありがとうございました (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» ご指摘、ありがとうございました。本当に助かります…orzすぐ、誤字や誤った設定をしてしまう癖があり、誤字などがある作品の印象って悪くなると思うんです…。なので、珈世さんのような方がいらっしゃると本当に助かりますorz >> (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» >>また、文ストと混ると言うことは、文ストは好きだけどグロは苦手、と言う人も読めるような、マイナスな印象を与えず書けていたみたいで良かったです。 最後になりますが、他にも引き寄せられる作品がある中で読んでいただき本当にありがとうございました。 (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» Nightさん、コメントありがとうございます。内容を好んでいただけて、本当に嬉しい限りです…昇天できます…。それと、文ストと混ぜる、そして文ストの世界に転生する夢主が喰種という不思議な設定が上手く惹きつけられる要素になっているようで安心しています…orz >> (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 夜雨ナナトさん» >> 最後になりますが、数多くの作品の中でこの作品を読んで頂きそして、応援していただき本当にありがとうございました (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hitoesasami | 作成日時:2020年1月15日 0時