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「ふふっ、グルッペンったら酷い顔してる。」
駆けよった俺を見て弱々しく笑うA。
確かに今の自分の顔は鏡を見なくても分かるほど酷い顔をしていると思った。
だけど取り繕うなんて無理だ。
Aが目を開けて、俺の名前を呼んで笑っている。
その事実がどうしようもなく嬉しくて。
情けなくも泣き出しそうになるのを、布団の端から出たAの手を握り締めることで誤魔化した。
「グルッペン、怪我してない？」
「……なんともない、お前が、Aが守ってくれたからな。」
「そう、よかった。」
何がいいものか。
こんな思いをするくらいなら自分が刺された方がずっといい。
Aが刺されることの方が、俺にとっては何倍も痛いし苦しい。
「かっこ悪いなぁグルッペンは。」
Aの手がゆるりと頬を撫でる。
子供をあやすような優しい手つき。
「トントンにも怒られて、情けない顔して。」
不甲斐ない俺を責める言葉を紡ぐけど、口調は決して責めてなんかいなかった。
全てを許す母親のように微笑んだ顔が眩しかった。
「だけど大好きよ。かっこ悪くて情けないグルッペンが大好き。大丈夫、これからも何度だって私があなたを守ってあげる。」
たった一人。
世界でただ一人愛した女にここまで言わせるなんて。
違うな、俺にこんな事を言う女なんて世界のどこを探してもA以外いない。
「受け取ってくれ。」
ごちゃごちゃと考えていた事は全て吹き飛んだ。
ただ今すぐにでも、Aを繋ぎ止める物が欲しかった。
差し出した赤い石が光る指輪は、当然のようにAの左手の薬指にぴたりと嵌る。
「情けないし、かっこ悪いし、お前に守られてばかりだが、俺にはお前しかおらんと思っとる。もう二度とこんな思いさせんって誓う、やから……。」
「俺と結婚してください。」
膝をついて懇願するように頭を下げる。
いつの間にか忘れていたようだ、昔からそうだったじゃないか。
俺は結局Aに勝てないのだ。
迷うなんて俺のする事じゃない。
ただ俺はAに、この命が尽きるその時まで一緒にいて欲しいと頼む立場だ。
「勿論、一生守ってあげるね。」
宝石すらも霞むほどに輝くAの笑顔。
何度となく交わした誓いのキスを、彼女の指に嵌る所有の証に落とした。
医務室の扉の外で二人の男は顔を見合わせて笑う。
もう少しだけ二人にしてあげようと、トントンは壁に背中を預けた。
やはりあの男を甘やかすのは自分ではなく彼女の役目。
「強いなぁAちゃんは。」
それはたった今この国の頂点に並び立った彼女に送る、最大の賛辞であった。
続く (更新停止中)
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しゅうな。 - 更新停止…初めて読みに来ましたがとても良いお話だと思いました！また更新していただける日を待ち侘びています。 (2021年11月23日 11時) (
レス) @page22 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 更新停止って知ってても凄くいい話だから何度も読みに来てしまう、そして続きが気になってしんどくなる… (2019年12月22日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ氏 - 更新停止ｯｯ…いい所でｯｯ…気長に待ってますぜ！ (2019年10月7日 21時) (レス) id: 19440439ad (このIDを非表示/違反報告)
なな - 更新停止……ぐぬぬっ…主さん忙しいのかな？……更新待ってますから…ね？ (2019年9月7日 20時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
さとりちゃん - 更新停止・・・ウッ・・・いつまでも待ってるよ。 (2019年4月7日 15時) (レス) id: 92b07cafca (このIDを非表示/違反報告)
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