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「出掛けるぞ。」

目覚めてすぐにグルッペンはそう言って支度を始めた。
仕事は大丈夫なの?トントンには言ってるの?などと色々思ったけど、グルッペンと出掛けるなんて森にいた頃以来だったから口には出さなかった。
相変わらずグルッペンに関してはつくづくズルいのだ、私は。

デート、とは少し違うかもしれない。
二人きりではないと思うし、どこに行くのかだって聞いてない、それでも浮かれた私はいそいそと支度を始める。

落ち着いた青色のワンピースに着替えて、ドレッサーの前に並べられた化粧品を手に取る。
お化粧をしながら無意識に零れた鼻歌、鏡越しに微笑むグルッペンと視線が合うと頬はチークを乗せたように赤く染まった。

「お待たせ。」
「ん、行くか。」

スっと開けられたグルッペンの肘に手を絡める。
まだ城内だから見られたら恥ずかしいな…でも、きっと誰も気にしないよね?

ピタリと寄り添った私を見下ろしたグルッペンが優しく微笑む。
あぁ幸せ、毎日でもこうしていたい。

ゆっくりと私の歩幅に合わせて廊下を歩いていると、前方にいつものようにキッチリとした恰好のトントンが見えた。
ラフな格好で私を連れるグルッペンを見ると眉間に皺を寄せて口を開く。

「もしかして仕事ほったらかしてデートにでも行こう言うんやないやろな?」

あ、やっぱり言ってなかったんだ。
予想は的中、こうなってはお出かけも中止かもしれない。
ガクリと肩が落ちそうになると、グルッペンは肘に添えた手をポンポンと叩いた。

「大丈夫やから待っとけ。」

私が大好きな自信満々の顔を見せてスルリと横から前に出たグルッペンは、そのままトントンの肩に手を置いて耳打ちをする。
こちらからじゃ何を言ったのか分からなかったけど、トントンの瞳が大きく開いて驚いている事は分かった。
そうしてポリポリと首の後ろを掻きながら「しゃあないな」と苦笑いを浮かべる様子を見て今度は私が驚いた。

あの規則に厳しいトントンがまさかデートの許可をくれるなんて、一体どんな魔法の言葉を言ったの…?

「帰ったらちゃんと仕事してな。」
「分かってる、いくぞA。」
「う、うん。ありがとうトントン。」
「気にせんでええよ、楽しんでおいで。」

トントンに見送られながら再びグルッペンと歩き始める。
クイ、とグルッペンの肘を引っ張って問いかけた。

「ね、何て言ったの?」
「内緒。」

口の前に人差し指を立てて悪戯っ子のように笑うグルッペン。
それにつられるように私も笑った。

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しゅうな。 - 更新停止…初めて読みに来ましたがとても良いお話だと思いました!また更新していただける日を待ち侘びています。 (2021年11月23日 11時) (レス) @page22 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 更新停止って知ってても凄くいい話だから何度も読みに来てしまう、そして続きが気になってしんどくなる… (2019年12月22日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ氏 - 更新停止ッッ…いい所でッッ…気長に待ってますぜ! (2019年10月7日 21時) (レス) id: 19440439ad (このIDを非表示/違反報告)
なな - 更新停止……ぐぬぬっ…主さん忙しいのかな?……更新待ってますから…ね? (2019年9月7日 20時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
さとりちゃん - 更新停止・・・ウッ・・・いつまでも待ってるよ。 (2019年4月7日 15時) (レス) id: 92b07cafca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひとちん | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年8月22日 14時

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