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「ん、風呂沸いてるから。」
差し出されたバスタオル。
生活感のない広い部屋。
嘘か本当か分からないが私を好きだと言ったのに、一度もこの人の部屋に来たことがなかった。
「佳乃？」
『佳乃、キス上手くなったな。』
なぜ今、鬱先生を思い出すのだろう。
私を呼ぶ声も、私に触れる手も全く違うのに。
『もっと悪い女になりな。』
頭に響く鬱先生の声を振りほどいて、差し出された腕を引く。
甘い香りの唇に吸い付き、舌を絡める。
やめて欲しい、これ以上思い出させないで欲しい。
『大人のキスの仕方教えてあげようか？』
鬱先生とは違う唇。
鬱先生とは違う香り。
それなのに頭の中から鬱先生が消えてくれない。
「…なぜ、泣くんだ？」
「さぁ？幸せだから、ですかね。」
そうだ、幸せだったんだ。
鬱先生と過ごす時間が、楽しくて幸せだったんだ。
先生と交わす軽口が、触れ合いが、口付けが、全て楽しくて幸せだった。
私は鬱先生が好きだったんだ。
今さらそんな事に気付くなんて。
いや、気付いていたとしてもどうにもならない。
先生がこの人より私を選ぶなんてあり得ない。
鬱先生、やっぱりあなたは流石です。
悪い女になりたかった私にちゃんと教えてくれたのね。
悪い女に相応しい、最高のバッドエンド。
最初の大人のキスは最低の思い出がよかった。
この人と唇を交わすたび、笑えるような最低な物がよかった。
あんなに嫌だった煙草の香りが、今はただ欲しくてたまらない。
近付いてくる赤い瞳に目を伏せる。
『キスするときは目ぇ瞑るのがマナーやで。』
そうね、鬱先生。
全部先生が教えてくれた事。
『楽しめた？』
えぇ、とても楽しかったですよ。
あなたがくれる全てが楽しかったです。
ふわりと持ち上げられた体が、柔らかいベットに沈む。
あぁよかった、先生に見せるための下着で。
これも先生が教えてくれた事。
首筋に感じるちくりとした痛み。
先生の肩の傷はもう消えてしまったのだろうか。
もっと強く噛んでおけばよかった。
鬱先生、何もなかった私の世界は今はあなたでいっぱいです。
始めて抱かれるのがあなたでなくてよかった。
知ってしまえばきっと耐えられなかった。
『ばいばい、染井ちゃん。』
さよなら、鬱先生。
たくさんの事を教えてくれてありがとう。
あなたを想って抱かれる私は、悪い女になれたでしょ？
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオ - コメント失礼します。思わず一気読みしちゃいました！貴方様は神ですか？ありがとうございます。 (2022年1月28日 22時) (
レス) id: 99e64baad8 (このIDを非表示/違反報告)
か(プロフ) - この作品を生み出してくれて本当にありがとうございました。 (2020年3月30日 16時) (レス) id: f33d68be6d (このIDを非表示/違反報告)
なな - 単推しとニ推しとか…もうにやけとまんねぇ() 語彙力分けてほしい(( (2019年9月7日 17時) (レス) id: 49b689c972 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮、(プロフ) - コメント失礼します…！！もう文面も設定も好みのドストレートすぎて思わず一気に読んで、衝動的にコメントを書いてしまいました。本当に楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました！！ (2019年1月11日 0時) (レス) id: b4451f6a6c (このIDを非表示/違反報告)
みたら士(プロフ) - 一話目からドストライクすぎてﾝﾝｯｯってなってます本当にありがとうございます崇めます (2018年12月3日 21時) (レス) id: d493129e91 (このIDを非表示/違反報告)
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