【wrwrd!】総統の愛した甘味屋さん

１７ ページ17

赤い瞳と目が合う。
次の瞬間には腰を引き寄せられ、温かい感触に包まれていた。
すぐにグルッペンに抱きしめられていると分かったけど、顔を上げることができない。
不安でいっぱいの時にこの温かさを知ってしまったら、もう零れる涙を止める事ができなかったから。
泣いてるなんて知られたらきっと鋭いグルッペンは私の気持ちに気付いてしまう、そうしたらきっと優しい彼を傷つけてしまう。
グルッペンのシャツを掴んで顔を胸に押し付ける、抱きしめられる幸福感と胸に宿った不安な気持ちでもう心の中がぐちゃぐちゃだ。

まるで子供みたい。
膝に乗せられて抱きしめられて、どうせならこのままこの胸に縋って泣きわめきたい。
行かないで、そばにいて、ずっと抱きしめていて、どれも口に出したら彼の心の重りになる呪いの言葉、それを叫びたくてしょうがないの。
だから、絶対言わないから、もう少しこのまま抱いていて欲しい。

「ごめん、起こしちゃったね。」

グルッペンの胸に顔を埋めたまま、涙を隠して精一杯の明るい声を出す。
少し私を抱く腕の力が強くなる。

「別にいい。Aに触られるのは嫌いじゃない。」
「…うん、私も。」

グルッペンの手が私の頭をよしよしと撫でる感触が心地いい。
もうこのまま時が止まればいいのに。

「もう少し寝る。お前も寝ろ。」
「うん、重くない？」
「嘗めるな、お前一人くらい抱えきれる。」

まるで私の不安に対する応えのよう。
私のこのグルッペンを縛りつけてしまう感情に平気だと応えてくれたような感覚になる。
やっぱりグルッペンに隠し事なんて無理だね、私のことなんて全てお見通し。
私の不安を取り除こうとしてくれてるんだよね。

いいんだよ、グルッペン。
大丈夫、あなたを縛ったりなんてしないから。
あなたも同じ想いでいてくれるって分かってる、あなたの態度やこの優しい手が、私を愛しいと思ってるって言ってくれてるよ。
だから私もあなたを縛ったりなんかしない、あなたが愛しいから、私はあなたの傍にはいられない。



だから、もう少しこのまま。
あなたの腕の中で幸せな夢を見させて。

１８→←１６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す